【弁護士コラム】会社が破産手続きをすると、代表者はどうなる? 法人破産した場合の代表者の生活は?
資金繰りがつかず、これ以上事業を継続していくのは難しい・・・
Q 会社が破産することになった場合、代表者である私はどうなるのでしょうか?
Q 会社の債務を連帯保証しているのですが、この保証債務はどうなりますか?
✓会社が破産することになった場合に代表者が取り得る債務整理の方法
✓各債務整理手続きの内容
✓各債務整理手続きのメリット・デメリット
★このページのポイント★
✓Point①
会社が破産することになった場合、会社と代表者とは法律上は別の人格であることから、例えば株式会社の場合には、当然に代表者も債務整理をせざるを得なくなるわけではありません。
しかし、現実には、代表者は会社の債務を連帯保証しているケースが多く、この場合は代表者についても債務整理をせざるを得ないことが多いです。
✓Point②
債務を整理する手続きには、①任意整理、②破産手続き、③再生手続きがあります。裁判所の関与があるかどうか、手続き後に債務の弁済を要するかどうかなどの違いがあります。
また、各手続きにメリット・デメリットがありますので、どの手続きを選択するかは、債務や代表者の生活状況などを踏まえ、慎重に検討する必要があります。
1. 会社が破産手続きをする場合の代表者の債務整理
法律上、法人である会社と自然人であるその代表者は、別人格と評価されます。
会社には、合名会社、合資会社、合同会社、株式会社の4種類があります。
このうち、合名会社と合資会社では、「無限責任社員」の場合には会社債務について、「無限責任社員」たる自然人も無限責任を負います。
つまり、無限責任社員には、会社が破産した場合、会社債務を自らの財産で弁済する責任があります。 これに対し、合資会社の「有限責任社員」や合同会社・株式会社の役員・代表者は、会社債務について無限責任を負っているわけではありません。
従って、善管注意義務に従って誠実に会社を運営している限り、会社が破産した場合であっても、当然に会社の債務について自らの財産で弁済しなければならないわけではありません。
しかしながら、現実には、代表者は会社の債務を連帯保証しているケースが多いです。このような場合には、会社の破産手続きが終わっても、代表者には、連帯保証人として返済の義務が残ります。
従って、多くの場合、会社の破産と同時に代表者の債務整理もしなければなりません。
2. 債務整理の種類
債務整理には、①任意整理、②破産手続き、③再生手続きがあります。
このうち、①任意整理は、裁判所を通さない手続です。
②破産手続き及び③再生手続きは、いずれも裁判所に申し立てをして行う手続きです。
また、②破産手続きについては、免責を得れば手続き後に債務の弁済を要しないのに対し、①任意整理及び③再生手続きについては、手続き終了後も、手続きの中で決まった金額の弁済が継続します(ただし、任意整理手続きの結果、過払い金が判明するなどして、最終的に弁済すべきものが残らない場合もあります。)。
3. 任意整理とは
任意整理とは、裁判所を通さずに、弁護士が代理人となって債権者と債務者の間に入って交渉し、借金の減額や利息の一部カット、返済方法などを決め、和解を求めていく手続のことです。 減額して残った借金は、通常3~5年をかけて、返済していくことになります。
任意整理のメリットとしては、裁判手続が必要ないことが挙げられます。 任意整理は裁判所が関与しない手続きですので、時間や裁判所への予納金等の費用がかかりません。 また、破産手続きのように、手続きを行うことによる資格制限はありません。
これに対し、任意整理のデメリットとしては、まず、裁判手続きほどは借金の減額ができないことが挙げられます。 任意整理は、裁判手続きである破産手続きや再生手続きのように、借金の全額もしくは一部が免除されるわけではありません
減らせる借金の額は裁判手続きによる債務整理よりも低くなります。
また、貸金業界の不況に伴い、解決時までの利息金・損害金を全て一括で払わなければ和解をしないという強硬な態度を取る業者も増えています。 また、原則として信用情報機関に登録される(いわゆるブラックリストに載ってしまう。)ので、5年~7年間は自分名義のクレジットカードを作ったり、新たな借入をすることができなくなります。
4. 破産手続とは
破産手続きとは、裁判所へ申立てをして破産の手続きをすることにより今までの借金を全てなくすことができる制度です。
法人と個人の破産では、共通点も多いですが根本的な違いもあります。
破産手続きの大きなメリットは、自己破産を行い免責が確定すれば、借金が帳消しになり、支払いの義務がなくなることです。
また、弁護士が介入することにより、支払いがストップし、債権者などからの借金返済に関する督促電話がなくなります(ただし、一部闇金融業者や、個人の債権者の場合、取立の停止に至るまで、ある程度の期間が必要となるケースもあります。)。
このように、破産手続きは、債務超過で苦しんでいる人に対し、再び立ち直るチャンスを与えるために国が作った制度です。
ただし、自己破産によりこれまでの借金が帳消しになるわけですから、いくつかデメリットもあります。 自己破産のデメリットとしては、まず、信用情報機関に登録される(いわゆるブラックリストに載ってしまう。)ので、5年~7年間は自分名義のクレジットカードを作ったり、新たな借入をすることができなくなることです。
また、破産をすると、一部の職業に免責までの短期間つけなくなったり、その間は資格停止処分となります。
例えば、一部の士業・保険勧誘や証券社外務員などの第三者の財産に関与する仕事などです。さらに、保証人や後見人等にもなれません。 ただし、この制限は、免責がおりた段階で解除されます。
破産のデメリットとして近年問題になっているのが、官報に掲載されるということです。
官報とは、政府発行の新聞のようなもので、そこに破産した人の情報が記載されます。
以前は、官報の内容が一般の人の目に触れることは少なかったのですが、近年は、官報の破産者情報をインターネットで検索できるようにしたサイトが登場するようになりました。
また、ヤミ金業者などは、官報をチェックしDMなどを送ってくることがあります。
一度破産すると7年後までは破産できませんので、ヤミ金業者にとっては絶好のターゲットとなるのです。
5. 個人再生とは
個人再生とは、裁判所へ申立てをして、債務の一部免除や長期の弁済条件を盛り込んだ再生計画を基に返済していく手続きです。
この手続きは、個人事業主も対象とされており、借金額5000万円以下など一定の条件をクリアしていれば利用可能です。 弁済期間は原則3年で、最長5年間です。
住宅ローンを抱えている場合には、マイホームを確保しながら再生することも可能です。
自己破産と異なり、全ての借金が帳消しになるわけではありませんが、減額はかなり大幅にすることができます。
個人再生のメリットとしては、まずは、大幅に借金を減額することができる可能性がある点です。
特に、住宅ローンがある場合、マイホームを残したまま返済することができることは大きなメリットです。
具体的には、住宅ローン以外の借金を5分の1程度まで圧縮できる可能性があるため、毎月の支払いが楽になります。圧縮後は将来の利息がカットされます。
ただし、圧縮割合は、債務の額、資産の額、選択する再生手続きの種類によって異なります。
また、弁護士が介入することにより、支払いがストップし(但し、住宅を残す手続を希望される場合、住宅ローンの返済は行うのが原則です。)、債権者などからの借金返済に関する督促電話がなくなります。
さらに、破産手続では職業制限や資格制限がありますが、個人再生の場合には、それがありません。 他方で、個人再生のデメリットとしては、まず、信用情報機関に登録される(いわゆるブラックリストに載ってしまう。)ので、5年~7年間は自分名義のクレジットカードを作ったり、新たな借入をすることができなくなることです。
また、個人再生は、他の債務整理方法に比べて手続きが非常に煩雑であるため、自分だけで申し立てから返済まで行うことは困難です。 弁護士などの専門家に依頼することを検討するべきでしょう。
6. まとめ
法人の破産やそれに伴う代表者の債務整理は、人生をやり直すことのできる「人生再スタート」の制度であると言えます。
人生の再スタートをスムーズに切るためには、代表者個人の債務や生活状況にかんがみて最良の手続きを選択し、迅速・的確に各種手続きを遂行することが不可欠です。
資金繰りの問題から事業継続が難しいなど、法人破産の可能性が視野に入ってきた場合には、可能な限り早く、専門家である弁護士にご相談することをお勧めします。
当事務所では、法人破産や代表者様の債務整理について、ご納得いただけるまでご説明いたします。
お一人で悩まず、ぜひ一度ご相談ください。
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この記事の監修者
弁護士 星野 彩子
注力分野:法人破産,個人破産,個人再生
神奈川県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。埼玉弁護士会所属。
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