【弁護士コラム】本当に個人再生手続をしても大丈夫?個人再生手続きのデメリットと弁護士の探し方を解説
持ち家を残しながら借金の整理ができる個人再生手続きってどういうものですか?
自宅を残しながら借金を減額してもらえるのはありがたいですが、デメリットが大きいのではないかと心配です・・・。
本当に個人再生手続きで借金を減らしても大丈夫なのでしょうか? どんな弁護士に頼めば安心ですか?
✓ 個人再生手続とはなにか
✓ 個人再生手続で持ち家を残せる理由
✓ 個人再生手続きのデメリット
✓ 個人再生手続きを依頼する弁護士の探し方
短くまとめると、
○ 個人再生とは、裁判所へ申立てをして、債務の一部免除や長期の弁済条件を盛り込んだ再生計画を基に、3年から5年間で返済していく手続きのこと。
○ 住宅資金特別条項により、持ち家を手放さずに借金を整理することが可能に。
○ 個人再生手続には、いくつかデメリットがあるので、手続きにあたっては専門家に相談するのが◎。
○ お住まいの近くの信頼できる弁護士に依頼して、安心して手続きを進めよう。
1 個人再生手続きとはなにか
個人再生手続きとは、裁判所へ申立てをして、債務の一部免除や長期の弁済条件を盛り込んだ再生計画を基に返済していく手続きです。
この手続きは、借金額5000万円以下など一定の条件をクリアしていれば、個人事業主も利用可能です。
弁済期間は原則3年で、最長5年間です。
個人再生手続きのメリットとしては、まず、住宅ローンを抱えている場合に、マイホーム(持ち家)を確保しながら再生することも可能な点です。
また、自己破産と異なり、全ての借金を支払わなくてよいことになるわけではありませんが、借金の金額は、かなり大幅に減額することができます。
具体的には、住宅ローン以外の借金を5分の1程度まで圧縮できる可能性があります。その上、圧縮後は将来の利息がカットされます。そのため、個人再生手続きができれば、毎月の支払いがかなり楽になる人が多いです。
ただし、圧縮割合は、債務の額、資産の額、選択する再生手続きの種類によって異なります。
さらに、弁護士が介入することにより、金融機関等の債権者への支払いがストップし(但し、住宅を残す手続を希望される場合、住宅ローンの返済は行うのが原則です。)、債権者などからご本人への借金返済に関する督促電話がなくなります。
加えて、破産手続では職業制限や資格制限がありますが、個人再生の場合にはそれがない点も、メリットと言えるでしょう。
2 個人再生手続で持ち家を残せる理由
個人再生手続に関して定められている「民事再生法」の中に、「住宅資金特別条項」(住宅ローン特則)に関する定めがあり、こちらの条項を使うことができる場合には、持ち家を残しながら個人再生手続で借金を減額することが可能になります。
簡単にいうと、法律で、住宅ローンの付いた持ち家を残し、その住宅ローンを支払いながら再生手続を行うための定めを再生計画に盛り込むことが認められているのです。
住宅資金特別条項は、住宅ローンについて支払いが滞ることなく継続して支払いが行われる(再生手続き中も支払いを継続します。)場合を原則型としますが、利用できるのはそのような場合に限られるわけではありません。
住宅ローンを滞納してしまった場合でも、住宅資金特別条項を使って持ち家を残すことができるケースもあります。
どのような場合に持ち家を残すことが可能かについては、迅速かつ専門的な判断が必要になります(例えば、住宅ローンの保証会社が住宅ローンをご本人に代わって返済し(「代位弁済」といいます。)、6ヵ月間を経過してしまっている場合には、住宅ローン条項を利用することはできません。)。
住宅ローンを滞納してしまっている場合で、個人再生を検討されている方は、早急に弁護士に相談しましょう。
3 個人再生手続きのデメリット
このように、持ち家を残しながら大幅に借金を減額できる可能性もある個人再生手続きですが、手続きを利用するにあたってデメリットもあります。
⑴ 信用情報機関に登録される
個人再生のデメリットとしては、まず、信用情報機関に登録される(いわゆるブラックリストに載ってしまう。)ことが挙げられます。
そのため、5年~7年間は自分名義のクレジットカードを作ったり、新たな借入をすることができなくなります。
⑵ 借金をゼロにすることはできない
個人再生手続きは、借金を大幅に減額することが期待できますが、自己破産と異なり、全ての借金を支払わなくてよいことになるわけではありません。
また、当然のことながら、住宅ローンについては減額されません。
そのため、手続きが終わった後に減額後の借金の返済や住宅ローンを返済するための収入があるかどうか、個人再生手続きの中で裁判所にチェックされます。
⑶ 個人再生手続きをしたことが官報に掲載される
個人再生手続きを行うと、その手続きを行った旨と氏名住所が官報に掲載されます。
官報とは、政府や各府省が国民に広く知らせるために発表する公文や公告、会社法による法定公告等の記事が掲載されている新聞のようなものですが、金融機関や都道府県職員等の限られた人しか見ないため、一般の人の目に触れるのは稀です。
しかしながら、近年、官報に記載された破産者等の情報をインターネットに掲載するケースがあり、このような場合には、一般の人に個人再生手続きを行ったことがわかってしまうリスクが大きくなるでしょう。
⑷ 個人再生手続きを利用できる要件が厳格
前述の通り、個人再生手続きは、手続き終了後も減額後の借金の返済を行うことが前提となるため、手続きを利用するためには、ご本人に継続的・反復した収入を得る見込みがあることなど、様々な要件が必要です。
また、住宅資金特別条項を利用する場合には、個人再生の要件だけでなく、住宅資金特別条項固有の要件も充たす必要があります。例えば、住宅の利用状況や、住宅についている担保権の内容によっては、住宅資金特別条項が使えず、持ち家を残しながら個人再生手続きをすることができない場合もあります。
これらの要件は、非常に細かく専門的な知識が必要となるため、ご本人だけでは個人再生手続きを行うことができるかどうかの判断をすることは難しいことが多いのが実情です。
⑸ 手続きが煩雑で本人だけで行うことが難しい
個人再生は、他の債務整理方法に比べて、裁判所への提出書類の内容や手続きが非常に煩雑であるため、ご本人だけで申し立てから返済まですべて自分で行うことは困難です。
料金はかかりますが、弁護士などの専門家に依頼することを検討するべきでしょう。
4 個人再生手続きを依頼する弁護士の探し方
以上のように、個人再生手続きは要件も手続きも難しく、またデメリットもあります。
ご本人だけで行うのは難しいため、以下のような弁護士に依頼することがおすすめです。
⑴ 個人再生手続きやその他の債務整理の経験が豊富な法律事務所/弁護士
これまで説明した通り、個人再生手続きは、手続き自体もその要件も非常に複雑で専門的知識が必要になります。
個人再生手続きを弁護士に依頼する場合は、個人再生手続きの実績が豊富な弁護士を選ぶとよいでしょう。
また、場合によっては、そもそも個人再生手続きを行うべきなのか、その他の債務整理方法である破産や任意整理等を選ぶべきなのかという判断も必要になります。そのため、個人再生手続きだけではなく、債務整理全体についての経験が多い弁護士が望ましいと言えます。
⑵ お住まいの地域に密着した法律事務所/弁護士
個人再生手続きを申し立てる裁判所は、原則として債務者ご本人のご住所を管轄する裁判所です。
個人再生手続きは、裁判所によって手続きの細部が異なる場合もあるため、個人再生手続きを依頼する場合は、その地域の裁判所の事務をよく知っている地元の法律事務所、つまり債務者ご本人のお住まいに近い法律事務所を選ぶとよいでしょう。
また、個人再生手続きの申し立ての準備や手続き中の書類の提出にあたっては、ご依頼の事務所へ行かなければならない機会も多くなります。
この点でも、債務者ご本人のお住まいに近い法律事務所を選ぶメリットがあると言えるでしょう。
⑶ ご本人が安心してご依頼できる法律事務所/弁護士
申立て書類を作成するにあたっては、通常、依頼した弁護士やそのアシスタントと複数回打ち合わせをする必要があります。また、ご依頼から手続きが全て終了するまで1年以上かかることも珍しくありません。
そのため、依頼する弁護士やアシスタントに対して、債務者ご本人が話しやすい雰囲気があると感じるかどうかは極めて重要です。
本来、自分の味方であるはずの弁護士に対してストレスを抱えながら長期間にわたる手続きを行うことは、ご本人にとって望ましくありません。
債務整理のご相談は無料としている事務所も多いので、ご自身が安心して依頼できる弁護士を探しましょう。
⑷ 費用の説明が明確な法律事務所/弁護士
既に日々のお支払いに困難を感じている債務者ご本人にとって、弁護士費用やその他の費用(裁判所に支払う費用など)が、いつ、いくらかかるのかは、とても重要なことです。
弁護士に依頼する場合、支払わなければいけない費用については、ご自身が納得いくまで説明してもらいましょう。
5 まとめ
持ち家を手放さずに借金を減額できる個人再生手続きは、きちんと利用することができれば、とても有用な制度です。
借金問題は、放っておいても事態が悪化するケースがほとんどです。
特に、持ち家を手放さずに個人再生手続きの利用を希望する場合には、迅速な対応が必要です。
住宅ローンを抱えながら借金でお悩みの方は、まずは弁護士に相談してみましょう。
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この記事の監修者
弁護士 星野 彩子
注力分野:法人破産,個人破産,個人再生
神奈川県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。埼玉弁護士会所属。
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