いわゆるブラックリストとは何か?
「債務整理を行うと、ブラックリストに登録される」といわれることがあります。
本記事では、ブラックリストについて説明します。
1. ブラックリストとは?信用情報機関とは?
借金問題に関連して、よくブラックリストという用語を目にすることがあると思います。
もっとも、金融業界においてブラックリストという名称のリスト自体が存在するわけではありません。
「信用情報機関に事故情報が登録されること」を指して俗にブラックリストと呼ばれると理解しておいたほうがよいでしょう。
「信用情報機関」とは個人の信用情報(クレジットカードやキャッシングの契約状況、借入・返済などの取引情報)を管理する機関です。
では、なぜそのような機関があるのでしょうか。
クレジットカードを作ったりローンを組んだりする場合、カード会社やローン会社は申込者が返済をきちんとするか(信用があるか)を審査する必要があります。
しかし、申込者がその会社を初めて利用する人物の場合、信用のある人なのかを判断することは大変難しいです。
申込者が他のクレジットカード会社やローン会社との取引状況や過去の滞納歴などを確認し、適切な審査を可能にするために、信用情報機関があります。
2. どのような信用情報機関があるのか?
日本には以下の3つが存在します。
① CIC(株式会社シー・アイ・シー)
② JICC(株式会社日本信用情報機構)
③ 全銀協(JBA、一般社団法人全国銀行協会)
それぞれの機関に特色があり、一部の機関のみに登録をしている企業もあれば3つの機関すべてに登録をしている企業もあります。
例えば、以下の企業は全ての信用情報機関に加盟しています(2022年10月現在の情報です)。
- イオン銀行
- みずほ銀行
- 三井住友銀行
- 三菱UFJ銀行
- 楽天銀行
3つの信用情報機関は、過剰貸付の防止等の観点から互いに情報の一部を共有しており、相互に情報の補完をし合っています。
以下では、それぞれの信用情報機関の特徴について解説します。
① CIC(株式会社シー・アイ・シー)
割賦販売や消費者ローン等のクレジット事業を営む企業が多く登録している信用情報機関です。
2022年10月現在、以下のような会社が加盟会員となっています(CICのホームページより)。
CICに加盟している信販会社の例
- アプラス
- オリエントコーポレーション
- ジャックス
- クレディセゾン
CICに加盟しているカード会社の例
- エポスカード
- オリックスクレジット
- ジェーシービー
- 三井住友カード
- 楽天カード
② JICC(株式会社日本信用情報機構)
消費者金融などの貸金業者や、保証会社が多く登録している信用情報機関です。
2022年10月現在、以下のような会社が加盟会員となっています(JICCのホームページより。)。
JICCに加盟している消費者金融の例
- アイフル
- アコム
- SMBCコンシューマーファイナンス
- SMBCモビット
- 三菱UFJニコス
JICCに加盟している保証会社の例
- みずほ信用保証
- 全国保証
- 全保連
JICCに加盟している通信会社の例
- NTTドコモ
- ソフトバンク
JICCに加盟しているその他会社の例
- ゆうちょ銀行
- 独立行政法人住宅金融機構
③ 全銀協(JBA、一般社団法人全国銀行協会)
銀行や信用組合、農協などが多く登録している信用情報機関です。
2022年10月現在、以下のような会社が加盟会員となっています(全銀協のホームページによる。)
銀行
- 埼玉りそな銀行
- 常陽銀行
- 三井住友信託銀行
- 武蔵野銀行
- paypay銀行
信用組合
- 青木信用金庫
- 埼玉縣信用金庫
- 東京東信用金庫
農協
- 越谷市農業協同組合
その他
- 日本学生支援機構
3. 登録される信用情報とは?
信用情報機関には、どのような情報が登録されるのでしょうか。
どのような情報が信用情報機関に登録されるかは、それぞれの信用情報機関によって、異なります。
① CICの場合
CICでは、⑴CICに加盟するクレジット会社等から登録される情報と⑵CICが独自に収集する情報が登録されるとされています。
⑴加盟するクレジット会社等から登録される情報とは、①クレジットカードやローン等の申し込み時の情報(名前や申し込んだ契約の内容など)、②クレジットカードやローン等の契約内容や支払状況、残高といった情報(毎月の支払い状況など)、③クレジットカードやローン等の利用中に支払い能力などを調査した情報などが記録されるとしています。
⑵CICが独自に収集する情報とは、本人からCICに申告した情報などが登録されます。
② JICCの場合
JICCでは、⑴加盟会社から提供を受ける情報と、⑵その他の情報が信用情報として登録されるとされています。
⑴ 加盟会社から提供を受ける情報
大きく分けて、①本人を特定するための情報、②契約内容に関する情報、③返済状況に関する情報、④取引事実に関する情報、⑤申し込みに関する情報が登録されます。
① 本人を特定するための情報
氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先、勤務先の電話番号、運転免許証の記載番号など
② 契約内容に関する情報
登録会員名、契約の種類、契約日、貸付日、契約金額、貸付金額、保証額など
③ 返済状況に関する情報
入金日、入金予定日、残高金額、完済日、滞納状況など
④ 取引事実に関する情報
債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡など
⑤ 申し込みに関する情報
本人特定情報と申込日、申込商品に関する情報
⑵ その他の情報
本人から、本人確認書類の紛失があった場合の届出や日本貸金業協会等に対し、貸付自粛依頼を申し入れた場合の情報が登録されます。
貸付自粛依頼とは、債務者などが、浪費やギャンブルによる多重債務を防ぐため、日本貸金業協会または全銀協に対して新たな貸付をしないことを申告し、貸付を受けないようにするための制度です。
4. 「事故情報」の登録
事故情報とは、一般的に信用を傷つける情報をいいます。
例えば、約束の返済日までに返済ができない、一定期間返済を怠る、債務整理を行うなどが挙げられます。
いずれの機関においても、このような信用を傷つける事態が発生すればその事実が「事故情報」として登録されるでしょう。
先ほどのJICCの例では、滞納状況、債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡といった情報が事故情報として扱われるといえるでしょう。
事故情報の登録期間中は、新規にローンを組むこと、クレジットカードを作ること、お金を借りることなど一定の行為が制限されます。
これらの事故情報は、各機関にもよりますが、概ね少なくとも5~10年程度登録されるといわれています。
債務整理した場合、手続ごとで扱いは異なりますが、通常は手続終了後、上記期間を経過するなど一定の条件が整えば、信用情報は回復するといわれています。
もっとも、弁護士に依頼する時点では通常「返済を滞納している」「支払を遅滞している」状態にあることがほとんどです。
この返済の滞納や支払の遅滞は、それ自体が事故情報として扱われることが一般です。
そのため、債務整理の依頼を受けた弁護士による受任通知の送付によってはじめて事故情報に登録されるというケースは多くないといえます。
なお、完済した後に過払い金返還請求手続をとる場合には、事故情報として登録されることはないとされています。
5. 信用情報の確認方法
ご自身の信用情報の登録内容を知るためにはどうすればよいのでしょうか?
答えは簡単で、信用情報機関に、ご自身の信用情報の開示請求をすれば、開示を受けることができます。
信用情報機関ごとに、開示請求の仕方が案内されていますので、過去に債務整理等をした方で、ご自身の信用情報が気になる方、そろそろクレジットカードを作りたいなどと考えている方は、一度信用情報を取り寄せてみてもよいかもしれません。
開示の方法は、信用情報機関によって異なりますが、郵送やwebによる申請も受け付けている機関が多いようです。
なお、開示には費用がかかります。概ね1機関につき1000円前後ですが、開示の方法などによっても異なります。
詳しくは、各機関のホームページをご確認ください。
それぞれの機関により加盟している企業が異なるため、過去の取引履歴等を確認しどの機関へ開示を請求すれば効率よく開示を受けることができるか検討するのがよいと思います。
この記事の監修者
弁護士 松本 侑樹
注力分野:法人破産,個人破産,個人再生
埼玉県出身。中央大学法科大学院卒業。埼玉弁護士会所属。
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