【弁護士コラム】離婚後、住宅ローンでの自己破産は可能?まずは弁護士への相談してみよう
妻と離婚し、子供の親権者が妻になったので、養育費を払っています。
離婚前に購入した私名義の持ち家のマンションには私が住んでいましたが、住宅ローンの支払いがきつく、キャッシングやリボ払いに頼るようになりました。
しかし、最近、借入金の返済もままならなくなってきました。
Q. 私が自己破産した場合、マンションはどうなるのでしょうか?
離婚した妻や子供に影響はありますか?
✓離婚後、住宅ローンが原因で自己破産するケース
✓自己破産後の持ち家がどうなるか
✓自己破産が元配偶者や子供に及ぼす影響
✓自己破産以外の解決方法
★このページのポイント★
✓離婚後、住宅ローンが原因で自己破産することはできる。
✓自己破産した場合、原則として持ち家は手放すことになる。
✓住宅ローンを元配偶者が連帯保証している場合には、自己破産が元配偶者に影響する。
✓持ち家を手放したくない場合、任意整理や個人再生を検討することも。
✓離婚後の住宅ローンによる自己破産は、弁護士への相談・依頼で解決。
1. 離婚後、住宅ローンが原因で自己破産することはできる?
離婚をすると、離婚前とは生活が一変してしまい、結果的に生活が苦しくなってしまう人も少なくありません。
例えば、離婚前は夫婦共働きでの収入を前提に夫が住宅ローンを組んで夫名義の持ち家を購入していたところ、離婚によって妻が持ち家を出て、夫が一人で持ち家に住み続けているというケースです。
この場合、夫婦共働きでの収入を前提に生活の目途を立てていたため、離婚後に妻の収入分がなくなってしまうと、住宅ローンの金額と自らの生活費を夫一人で賄うことが難しいという状況になってしまう可能性があるのです。
子供がいて養育費を支払わなければいけない場合、さらに状況が厳しくなることもあるでしょう。
このように、離婚後に収入が支出に追いつかなくなると、人によっては住宅ローンや生活費、養育費の支払いを借入れで賄うようになってしまいます。
そうすると、やがて借入額が膨らんでしまい、結果として、住宅ローンやその他の借金を返済することが困難な状況になってしまうのです。
このような場合、離婚後、自己破産することを検討することになります。
借入れが住宅ローンのみだったとしても、住宅がオーバーローン(住宅の価値が住宅ローンよりも小さく、住宅を売却してもローンが残ってしまう状態)で、収入が乏しく他に資産もなく、継続的に住宅ローンを支払っていくのが困難な場合には、自己破産をすることができる可能性があります。
2. 離婚後、住宅ローンが原因で自己破産することはできる?
自己破産をした場合、不動産や高級自動車などの高額な財産や、株式など投機性の高い財産については、原則として処分を求められることになるでしょう。
つまり、離婚後に自己破産をした場合、持ち家を所有し続けることはできず、引っ越しをすることになります。
引っ越しをするタイミングは、持ち家をどのように処分するかや処分する時期によって異なります。
他方で、自己破産をした場合に、持ち家以外の財産もすべて手放さなければいけないかというと、そういうわけではありません。
まず、今後の生活に最低限必要な現金や預貯金などは残すことができます。
何をどのくらい残せるかは裁判所の運用によって異なりますが、参考までに、令和4年現在のさいたま地方裁判所越谷支部の運用では合計99万円までの財産(現金や預貯金など)を残すことができます。
また、自宅の家具やテレビ、冷蔵庫などの生活に必要な家電製品も、基本的には手放す必要はありません。
3. 離婚後、住宅ローンが原因で自己破産した場合の元配偶者や子供への影響は?
離婚後に自己破産した場合、元配偶者や子供へ何か影響があるのでしょうか。
まず、自己破産をしたとしても、元配偶者や子供は基本的に影響はありません。
あくまでも自分の借金であるため、原則として元配偶者や子供に請求がなされることはありません。
自己破産したことが戸籍等に載るわけではありませんし、個人の自己破産がその家族の職業等を制限するようなこともありません。
また、子の養育費については、自己破産をしたとしても払い続ける必要があります。
他方、例えば、元配偶者が住宅ローンを連帯保証しているケースなどでは、離婚後の自己破産が元配偶者や子供に影響する可能性があります。
すなわち、このような場合、住宅ローンの債務者が自己破産した後は、金融機関は連帯保証人である元配偶者に対して住宅ローンの全額の弁済を求めるのが通常です。
しかし、元配偶者が住宅ローンを全額一括で弁済することができるようなケースはまれであり、結果的には、元配偶者も自己破産等の債務整理をしなければならない事態になってしまうのです。
したがって、元配偶者が住宅ローンの連帯保証人になっている場合等には、自己破産をするかどうか、慎重に検討する必要があります。
4.持ち家を手放したくない場合の自己破産以外の債務整理方法
持ち家を手放したくない場合、自己破産以外の債務整理方法を検討する必要があります。
具体的には、任意整理と個人再生です。
任意整理とは、裁判所を通さずに、弁護士が代理人となって債権者と債務者の間に入って交渉し、借金の減額や利息の一部カット、返済方法などを決め、和解を求めていく手続のことです。
減額して残った借金は、通常3~5年をかけて、返済していくことになります。 持ち家を残したい場合、任意整理では、整理する債権者を選択できるので、住宅ローンと持ち家はそのままにして(任意整理をする債権者に含めないで)、他の債務を任意整理することで、任意整理前よりも少ない金額の返済を目指すことになります。
ただし、任意整理では、借金を大きく減額できるわけではないことに注意する必要があります。
特に近年は、任意整理となった場合に直ちに裁判を起こしてきたり、遅延損害金のカットに応じなかったり、返済期間を3年までしか応じないなど、厳しい対応を取る業者も増えています。
そのため、借入金額や借入先、今後の収入の見通しによっては、任意整理以外の債務整理を行うことも検討する必要があります。
個人再生とは、裁判所へ申立てをして、債務の一部免除や長期の弁済条件を盛り込んだ再生計画を基に、3年から5年間で返済していく手続きです。 自己破産とは違い、一定額を返済する必要はありますが、任意整理の場合よりも大幅に債務を圧縮できる可能性があります。
そして、住宅ローンがある場合、持ち家を残しながら借金を減額できる可能性があることも大きなメリットです。
ただし、住宅ローンがある場合に持ち家を残しながら個人再生を行う、いわゆる「住宅ローン特則」には細かい要件があり、持ち家の名義がどうなっているかなどによっても利用の可否が異なります。
したがって、まずは住宅ローン特則付き個人再生の要件を満たしているかどうか、住宅ローンの内容や持ち家の状況等をよく検討する必要があります。
5.まとめ
以上のように、離婚後、住宅ローンの支払いが難しく債務整理を検討する場合、自己破産の他、任意整理や個人再生という手続きがあります。
どの手続きを選ぶべきかは、債務の金額、収入の見通し、持ち家の名義、持ち家についた担保の状況、持ち家の価値、生活状況などにより大きく異なります。
例えば、個人再生をして持ち家を残したいとご本人が考えていても、ご本人の状況から考えると、自己破産を検討せざるを得ないケースなどもあります。
従って、離婚後に住宅ローンが原因で債務整理を検討している場合には、まずは債務整理に詳しい専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
特に、持ち家を残したいなどの希望がある場合、住宅ローン特則付き再生が可能かどうかなどは、一般の方では判断が難しいため、専門家である弁護士に確認してみるのが良いでしょう。
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この記事の監修者
弁護士 星野 彩子
注力分野:法人破産,個人破産,個人再生
神奈川県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。埼玉弁護士会所属。
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