個人再生委員とは?

個人再生委員とは、個人再生計画の遂行可能性を判断する上で必要となる再生債務者の財産状況の調査や、再生債権の評価申立てに対する判断にあたり、事案を迅速かつ適切に処理するため裁判所を補助する機関です。

 

個人再生委員の役割を簡単に解説します。

 

再生手続を通して、最終的に再生計画案の策定に至るまで法的観点から各種アドバイスなどを行う者をいいますが、①再生債務者の財産及び収入の状況を調査すること、②再生債権の評価に関し裁判所を補助すること、③再生債務者が適正な再生計画案を作成するために必要な勧告をすることなどが基本的業務となってきます。より具体的には、個人再生手続を開始するにあたり、そもそも手続を開始することが相当か否かの意見を述べることなどが挙げられます。

 

個人再生委員は、再生債務者の負債の状況、収入の状況、今後の見通しなど各事情を評価し、法律に照らしその可否を判断する意見を裁判所に述べます。また、再生手続が進み、手続の終盤になると、再生計画案の作成について適当なアドバイスを行い、再生計画案について書面決議に付すべきか否かについて意見を述べます。

 

【個人再生委員はどういった方が選ばれるのか?】

上記のとおり、個人再生委員の仕事は、法的意見を述べること、各種法的なアドバイス・指示を行うことからも明らかなように、再生事件についての専門的知識及び経験が必要となります。そこで、多くの場合、弁護士が個人再生委員に就任することになります。個人再生委員を特定の者に依頼することはできず、基本、裁判所が選任することになります。

 

【すべての個人再生事件で個人再生委員が選任されるわけではない】

個人再生案件について、全件個人再生委員が選任される運用をする裁判所もありますが、さいたま地方裁判所越谷支部管轄内では、令和元年11月現在、全件選任とはなっていません。ただし、運用が変更になることはありますので、その点は弁護士にご確認ください。

 

個人再生委員が選任される場合は、以下のような場合です。

 

・履行可能性に問題がありそうなケース

・継続的収入を得られる見込みが厳しいケース

・複雑な権利関係となっているケース

・民事再生法に規定する問題があると考えられるケース

 

などです。

 

【個人再生委員が選任されるとどうなるのか?】

個人再生委員が選任されると、まず、選任されないケースと比べ、費用面で大きな違いが生じます。裁判所に納める予納金が15万円~20万円程度と指定されます。そして、これは基本的には、一括して納める必要がありますので、注意が必要です(ただし、裁判所によって一部分割で納めることを認めるなど運用が異なります。実際に申し立てを行う予定の地方裁判所にあらかじめ確認するとよいでしょう。)。なお、上記裁判所に納める予納金とは、弁護士に依頼する際に支払う弁護士費用(着手金・報酬金など)とは別の費用になります。

 

手続面では、多くの場合、個人再生委員との面談を経て、各手続、問題点について指示、事実確認、説明を求められることになります。

 

【個人再生委員が就任した場合、再生計画案が認可されやすくなるのか?】

個人再生委員が就任した場合に、再生計画案が認可されやすくなるのかといったご質問をいただく場合がありますが、必ずしもそうではないというのが回答になります。

 

個人再生委員は上記のとおりの職務を行うため、再生委員のアドバイスに従いながら手続を進めるという意味においては、再生計画案が認可されるために間違った方向には進まないといえるかもしれません。しかし、あくまでその限りの意味であって、手続の助言をもらえるから、法律上の要件が緩和される、再生委員が就任すると手続の成功が約束される(お墨付きをもらえた)ことと同じというものではありませんので、注意が必要です。

 

【個人再生委員はどこまで調査できるのか】

個人再生委員の調査権限については、議論があるところですが、直接調査する権限まではなく、概ね報告を受けるところが限界と考えられています。例えば、再生債務者名義の保険解約返戻金が問題となっている場合、再生債務者が報告を拒否している場合、個人再生委員が直接当該保険会社に対し照会を行い調査する権限まではないものと考えられるのが一般的です。

 

個人再生委員は、あくまで再生債務者が再生計画案を作成するために必要な「勧告」をすることができ、再生債務者の補助ではなく、裁判所の補助機関と考えられているからです。そして、個人再生委員は、再生債務者等に対し、収入状況等につき報告を求めることができこれに対し拒否または虚偽の報告をした場合、一定の刑罰を科されることになっています。このことからも、個人再生委員の調査権限は、あくまで再生債務者等から報告を受けることにとどまり、直接調査する権限までは有していないと考えざるをえないところです。

 

なお、このように考えても、最終的に個人再生委員が必要と考える資料を再生債務者が特段理由もなく拒否する場合、個人再生委員はそれを前提として各種意見をまとめることになりますから、結局、それによって生じる不利益は再生債務者自身にはねかえってくるものと考えたほうがよいでしょう。

 

個人再生委員に協力しない場合の不利益は再生債務者が負担することになると考えておいた方がよいと思います。

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この記事の監修者

弁護士 黒澤 洋介

注力分野:管財事件、個人破産、個人再生(個人再生委員含む)

弁護士 黒澤洋介

茨城県出身。横浜国立大学法科大学院卒業。埼玉弁護士会所属。

コメント:
近年は、裁判所から選任される破産管財人としての職務も多く、多方面で経験を積んでいます。法人破産などの中・大規模案件は所内でチームを作り、複数名の体制で対応することも可能です。まずはご相談ください。