2回目の自己破産は可能ですか? 条件や注意点、手続の流れを徹底解説」
目次
「もうダメだ」自己破産を一度経験した方は、再び同じ状況に追い込まれ、途方に暮れているかもしれません。しかし、諦めるのはまだ早いです。2回目の自己破産は、決して不可能ではありません。
本記事では、2回目の自己破産に関する疑問の数々を解説します。「2回目の自己破産はできるのか」「どんな条件があるのか」「手続はどうすればいいのか」など、弁護士の視点からわかりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
2回目の自己破産が必要なケース
自己破産を過去に経験した方は、借金に思い悩み、自己破産を決断され、手続が終了するまでの心理的負担を始め、必要書類の収集や裁判所(裁判官)からの質疑応答など、様々なご苦労があったはずです。にもかかわらず、再び借金に苦しんでいる方は一定数おり、人それぞれに事情があるかと思います。ここでは2回目の自己破産に至った要因の一部を紹介します。
- 収入の減少
- 1回目の破産後に安定した職に就いたが、会社の業績悪化やリストラで収入が激減し、生活費を借金で賄うようになった。
- 病気や怪我
- 自身や家族の病気・怪我で働けなくなり、医療費や生活費が重なって借金が膨らんだ。
- 家庭や離婚の問題
- 子どもが大きくなるにつれ教育費が想定以上に高額となり、借金をしてでも支えようとした。
配偶者との離婚や家庭内トラブルにより、養育費や慰謝料などの負担が重くなり、借金を重ねた。 - ブラック企業での勤務による精神的疾患
- 1回目の破産後に就職した職場がブラック企業で、長時間労働が続き、精神を病んで働けなくなり借金生活に逆戻りした。
- 浪費癖の再発
- しばらくの間は節約生活を送っていたが、ストレスや環境の影響で再びギャンブルに手を出し、気づいたらかなりの借金ができてしまった。
- 投資の失敗、詐欺被害
- 1回目の破産後に「これなら確実に儲かる」といった言葉を信じて投資に手を出したが、失敗してさらに大きな借金を背負った。
自己破産は2回目もできるのか
結論からすると、2回目の自己破産は可能です。法律上、自己破産に回数制限はありませんので、2回目でも自己破産をすることができます。
ただし、2回目の自己破産には、1回目とは異なる条件や注意点がいくつかあります。
2回目の自己破産が認められる条件
個人の方が自己破産をする最大の目的は、自己破産の手続を経て裁判所に免責(≒借金の返済責任を免除)してもらうことにあるでしょう。ここでいう「自己破産が認められる」とは、「免責」と位置づけし、以下2回目の自己破産が認められる条件について説明します。
1回目の自己破産から原則7年が経過していること
より正確に説明すると、1回目の免責許可の決定が確定した日から7年経過していることが必要です。これは自己破産の根拠法である「破産法」に免責の要件として明記されています(破産法252条1項10号イ)。
7年経過していない場合はどうなるか
原則2回目の自己破産は1回目から7年が経過していることが必要です。
ただし、破産法第252条2項の規定により、例外的に7年を経過していない場合であっても、裁判所が個人の事情を総合的に判断し、免責を許可するケースは理論上考えられます。これを裁量免責といいます。しかし、この例外的な免責は、特別な事情が認められる場合に限られており、実務上はそれなりのハードルが存在する稀なケースと言えるでしょう。
2回目の自己破産に至った経緯、借金の原因など個別事情
1回目と2回目の自己破産が認められる条件について、法律上は前項7年経過以外に明記されている違いはありません。では、7年経過していれば1回目と同様に免責されるのか、と言えばそうとも限りません。
裁判所は、免責を許可するか・不許可とするかの決定について広い裁量が認められています。つまり、一律ルールで決まるのではなく、各種事情から裁判所(裁判官)によって個別に判断されるということです。より正確には、いわゆる免責不許可事由(≒免責を認められない要件のこと)に該当しなければ免責許可決定がなされます。ただし、免責不許可事由に該当したとしても、それで直ちに免責不許可となるわけではなく、一切の事情を総合的に判断して免責許可決定がなされる場合もあるということです(これが裁量免責です)。
例えば、1回目の自己破産の原因がギャンブルであった場合、二度と繰り返さないという反省のもと免責が認められたにもかかわらず、再びギャンブルが原因で借金をした場合には、免責が認められない可能性が高くなるでしょう。
一方、1回目の自己破産の後、真摯に生活を立て直していたが、病気などやむを得ない事情で再び借金をした場合には、前ケースより免責が認められる可能性は高まると言えるかもしれません。
2回目の自己破産では、1回目よりも詳細に事情を説明する必要があります。繰り返しとなりますが、免責不許可事由に該当したとしても、それでも免責を許可するか・不許可とするかの決定は裁判所に広い裁量があります。慎重な判断が求められるため、経験豊富な専門家(弁護士など)へ相談することを推奨します。
2回目の自己破産で注意すべきポイント
2回目の自己破産で注意すべきポイントをQ&A方式で紹介します。
Q 2回目の自己破産の手続は1回目と比べてどう異なりますか?
A 一般的に、2回目の破産手続は管財事件*となる可能性が高いと言えるでしょう。裁判所は破産管財人を選任し、破産管財人が破産者の財産や破産に至る経緯の調査などを綿密に行います。そのため、1回目の自己破産より手間と時間がかかることが予想されます。
*自己破産の手続は2通りあり、比較的簡易な同時廃止事件と、複雑な管財事件に分けられます。
Q 2回目の自己破産で免責されない可能性はありますか?
A. あります。特に、1回目と2回目の自己破産の原因が双方ギャンブルや浪費などにあり、浪費等の免責不許可事由に該当する場合は、慎重に手続を進めていく必要があります。
免責されない可能性が高いと考えられる場合、自己破産ではなく別の債務整理を選択することも方法のひとつです。ご自身が免責されるかどうかは個別事情により異なりますので、まずは専門家である弁護士に相談されることをおすすめします。
Q 1回目の破産はばれますか?弁護士に相談する際の注意点はありますか?
A. 2回目の自己破産は特に慎重な判断が必要なため、専門家に相談することが重要です。専門家に相談する際は、正直に事情を話しましょう。隠し事があると手続がスムーズに進められない可能性があります。
自己破産の手続において、裁判所の調査に対し説明を拒むことや虚偽の説明をすることは免責不許可事由の1つに該当します。ご自身のために率直にお話してください。
2回目の自己破産の手続の流れ
2回目の自己破産について、裁判所へ提出する必要書類は基本的には1回目と同様です。しかし、前述のとおり管財事件となる可能性が高く、裁判所は破産管財人を選任し、1回目と比較してより厳格な審査を求めるケースが多いです。
管財事件の場合、裁判所に自己破産の申立をしたあとに、破産管財人が選任されます。そして、破産管財人との面談(通常は破産管財人の事務所で行われます)が最低1回は実施されます。さらに裁判所へ出頭する機会があります。また、破産手続が終了するまでの間、家計簿の提出を毎月求められたりすることもあります。たとえ自己破産の手続を専門家に依頼したとしても、事件の当事者はご本人になるためお客様自身に行っていただく作業が相当数発生しますので、心構えは必要です。
2回目の自己破産が難しい場合、他の方法を検討しよう
これまで説明したとおり、2回目の自己破産にはいくつか注意点があり、ご自身の事情や経緯によっては自己破産が難しいという方もいるでしょう。2回目の自己破産が難しいと判断された場合、他の債務整理を検討してみるのも有効な手段です。
個人再生
個人再生とは、一定の要件のもとで借金を減額し、3~5年で分割払いし再出発を図る制度です。自己破産と同様、裁判所を通して行う手続です。借金の総額によりどれくらい減額されるかは異なりますが、基本的に借金を5分の1まで減らすことができます(最低弁済額100万円や清算価値払いなど細かい要件はあります)。
自己破産と違い、借金の理由を問われない点が大きなメリットと言えます。
任意整理
任意整理とは、貸金業者などの債権者と交渉し、今後の返済方法について合意を取り付ける手続です。債権者が合意すれば、将来利息をカットしてもらえる可能性があり、借金返済までの道筋を立てることができます。ただし、借金の元本を減額することは難しいです。
裁判所を通さない手続のため、他人に知られることは基本的にありません。借金の理由も問われません。
2回目の自己破産を選ばれたお客様の実際の体験談
当事務所で実際にご依頼を受けた事案を1つ紹介します。
依頼者は、1回目の自己破産の手続後、経済的に問題なく過ごしていましたが、あるとき同僚に誘われてギャンブルを始めました。ビギナーズラックもあり相当な払戻金を獲得できたこともあってギャンブルにのめり込み、再び借金をしてしまいました。借金の原因がギャンブルだったこと、過去に自己破産をした経験から、今回は個人再生の依頼をしようと弁護士に相談されました。
個人再生は、借金は大きく減額されますが、最低3年間は毎月返済しなくてはなりません。依頼者の働く勤務先は労働条件が必ずしも良好とはいえなかったこと、依頼者自身も体調に若干問題があったことなど各種事情があり、それらを弁護士が検討し、依頼者と話し合った結果、2回目の自己破産の申立をすることにしました。
想定通り、管財事件となり破産管財人が選任されました。2回目の自己破産かつ借金の原因がギャンブルという厳しい局面でしたが、依頼者は深く反省し、家計簿を毎月しっかりとつけ、管財人の質問や調査にも真摯な姿勢で誠実に対応しました。その結果、免責不許可事由はあるものの、裁量により免責が相当であるとして、無事に免責となりました。
その他2回目の自己破産をされたお客様の事例を複数掲載しております。
Case1 2度目の破産免責が認められた事例(借金の理由:病気、養育費の不払い)
Case2 2度目の破産免責が認められた事例(借金の理由:生活費不足)
Case3 2度目の破産免責が認められた事例(借金の理由:ギャンブル・浪費)
2回目の自己破産は専門家へ相談しよう
2回目の自己破産は慎重な判断が必要なため、専門家への相談を強くお勧めします。借金にお悩みの方は精神面での負担が特に大きいです。専門家へ相談することで安心感も得られるでしょう。
具体的な相談先は、主に弁護士もしくは司法書士が挙げられます。弁護士と司法書士の違いを簡単に説明すると、弁護士は自己破産手続の代理人となれるのに対し、司法書士は書類作成のみにとどまります。もう少し分かりやすく例を挙げます。自己破産の手続では裁判所に出頭する機会が発生することがあります。弁護士であればお客様と一緒に裁判所へ入ることができますが、司法書士は代理人ではないのでそれができません。より安心感を求めるのであれば弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士を探す際は、お住まいの地域での実績があることを確認してみましょう。前述のとおり自己破産の手続については運用が各裁判所で異なります。お客様の地域での実績が豊富な事務所の方が、よりお客様の実情にあった助言が期待できるでしょう。
まとめ
今回は、2回目の自己破産が可能なのかについて解説しました。
2回目の自己破産は、1回目よりハードルが高いかもしれません。しかし、同じようなお悩みの方は一定数いらっしゃいます(2回目の自己破産の解決事例を掲載中です)。その他お客様の声も掲載しておりますので、是非ご覧ください。
江原総合法律事務所では、借金に関する法律相談を承っております。お客様の状況に応じた最適な方法を提案いたします。借金にお悩みの場合は、まず弁護士の法律相談をご利用ください。
投稿ナビゲーション
お困りのことがございましたら、
どうぞお気軽にお問い合わせください。
メールでのお問い合わせ
24時間受付
LINEでのお問い合わせ
平日9:00-18:00 土曜10:00-17:00
この記事の監修者
弁護士 黒澤 洋介
注力分野:管財事件、個人破産、個人再生(個人再生委員含む)

茨城県出身。横浜国立大学法科大学院卒業。埼玉弁護士会所属。
コメント:
近年は、裁判所から選任される破産管財人としての職務も多く、多方面で経験を積んでいます。法人破産などの中・大規模案件は所内でチームを作り、複数名の体制で対応することも可能です。まずはご相談ください。