後悔したくない!知っておくべき自己破産のデメリット~具体的な影響と注意点~
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自己破産とは、一般に、借金の返済が困難な場合に裁判所に申立てを行い、借金を免除(免責といいます)してもらう手続です。借金問題で悩んでいる方が、新たなスタートを切るための選択肢の一つと言えます。
しかし、人生に大きな影響を与える決断であるため、メリットだけでなく、デメリットについても正しく理解することが大切です。
本記事を読めば、自己破産の「デメリット」が分かります。さらに「自己破産後の生活」「他の債務整理との違い」について解説します。ご自身が自己破産の手続に適しているかどうか、自己破産を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
自己破産の主なデメリットとは
自己破産は、借金を免除されるというメリットがある一方で、いくつかのデメリットも伴います。
自己破産のデメリット1:財産の喪失
自己破産の手続を進めるにあたり、一定の財産は処分することになります。具体的には、預金、保険、自動車、有価証券、不動産などが対象となります。
ただし、全ての財産を失うわけではありません。大まかに捉えると総額99万円までの価値を有する資産は手元に残すことができます。*
*裁判所の運用や個別事案により異なります。ご自身の場合はどうなのか具体的に知りたい方は弁護士による法律相談をご利用ください。
住宅(不動産)の売却
持ち家の場合は、住宅を売却するなど現金化することが多いです。ローンが残っている場合は、住宅ローンの返済を停止するために、競売にかけられる可能性もあります。
自動車の売却
自動車ローンが残っている場合は、債権者(借入先業者)に返却しなければならない契約となっているケースが多いです。自動車ローンがない、価値が低い(例:売却しても数万円程度しか値がつかない)自動車は手元に残せる可能性があります。
有価証券(株式など)
一般的に生活にとって必須とはいえないため手元に残すことはできません。ただし、勤務先の株式を所有している場合(持株会)など例外的に手元に残すことができる可能性はあります。
その他の財産
宝石、着物、美術品など高額な資産は処分対象となる可能性があります。
また、最近は、分割払いで購入し返済が終わっていない資産性を有するiphoneなどのスマートフォンやipadなどのタブレットの返却を債権者から求められるケースが出てきました。(2025年1月時点)
自己破産のデメリット2:信用情報への影響(ブラックリスト)
自己破産の手続を行うと、いわゆる信用情報機関に事故情報が一定期間登録されます。この期間中は、クレジットカードの作成やローン利用が制限されるため、新たな借入れをすることが難しくなります。どれくらい登録されるのかは各信用情報機関により異なりますが、概ね自己破産などの手続が終結してから5年から10年程度と言われています。信用情報に登録されると、経済的信用が毀損しているため下記のような生活上の制約が発生します。
- クレジットカードが利用できない
- 住宅ローン、自動車ローン、消費者金融からの借入など、あらゆる種類のローンが利用できない
- 賃貸契約を結ぶ際、保証会社に加入することが難しくなる場合がある
- 携帯電話・スマートフォンなどを分割払いで購入することができなくなる可能性がある
自己破産のデメリット3:職業や資格の制限
自己破産の手続中は、一部の職業や資格が制限されます。例えば弁護士が自己破産をすると、一時的に資格を使えなくなるので、その間弁護士の仕事はできません。
しかし、一生制限されるのではなく、破産手続の開始決定から免責許可決定が確定するまでの一時的な期間です。3ヶ月から半年程度かかること一般的ですが、複雑な事案になると長期化することがあります。
ご自身が制限の対象となっている職業に就かれている場合は、慎重な判断が必要です。
主な制限される職業や資格
- 生命保険募集人
- 警備員
- 会社役員
- 税理士、宅地建物取引士、行政書士などの士業
自己破産のデメリット4:家族や周囲への影響
家族名義の財産は、一般的に自己破産の影響を受けません。連帯保証人になっている場合など一部例外を除き、家族が借金を返済する必要もありません。
しかし、自己破産は、家族に影響を与える可能性があります。経済的な影響としては、持ち家の売却、家賃の滞納により引越しせざるをえない場合、自動車の売却などがあると、家族の生活が一変することが考えられます。
心理的な影響としては、周囲に知られることを心配する方も多いかもしれません。官報(後述)に掲載されるため、絶対に他人に知られないとは言い切れません。また、自己破産の手続では、同居する家族全員の収入や支出を把握するため、家計簿の作成や配偶者の給与明細の提出を求められることがあります。ご家族に秘密にしたまま自己破産をしたいと考えられる方は多いですが、手続上、秘密にすることが難しいケースもあり、その場合は家族でよく話し合う必要があります。
自己破産のデメリット5:その他の日常生活への影響
官報への掲載
官報とは国が発行する機関誌です。氏名や住所が掲載されるため自己破産したことが周囲に知られる可能性が発生します。しかし、日常生活で官報を見る機会はほとんどないという方が多いのではないでしょうか。
預金口座の制限
銀行が債権者である場合、その銀行の預金口座は一定期間使用ができなくなります。その口座が給与の振込先口座である場合や、光熱費などの引き落とし口座に指定している場合は口座の変更手続きをしなければなりません。具体的には、借入をしていない別銀行の口座を開設するなどです。
一生その口座が使用できないのではなく、一般的には一定期間経過すると元通り使用できるようになることが多いです。
自己破産後の生活と再建の可能性
自己破産の手続が終われば、借金の返済から解放され、新たな生活を始めることができます。その反面、クレジットカードの利用ができなくなったり、ローンが組めなくなったりなど一定の制限がかかります。しかし、時間の経過とともに制限は解消され(信用が回復し)、再スタートを切ることは十分に可能です。
まずは再出発のためご自身の家計を見直しましょう。収支のバランスを把握し、必要以上の支出を控えることで、安定した生活基盤を築けます。最近は家計簿アプリなど便利なツールが沢山ありますので、上手に活用すれば無理なくお金の管理ができます。
信用情報が回復すれば、ローンを組むこともできるようになります。
自己破産は、新たな人生の出発点です。計画的な生活と前向きな行動が、明るい未来を開く鍵となります。
自己破産と他の債務整理手段の比較
借金問題の解決方法は、自己破産以外に任意整理、個人再生という方法があります。それぞれの方法によって、メリット・デメリットが異なります。
借金がどれくらい減るのか
- 自己破産
- 税金など一部例外を除いて借金は免除される
- 個人再生
- 一定の割合で借金が減額される
- 任意整理
- 一般的に借金の減額は難しい
- 自己破産
- 生活に必要な最低限の財産を除き、財産は処分しなければならない
- 個人再生
- 一定の財産を残すことができる
- 任意整理
- 財産はそのまま残すことができる
- 自己破産
- 氏名や住所が官報に掲載される
- 個人再生
- 氏名や住所が官報に掲載される
- 任意整理
- 官報に掲載されない
- 自己破産
- 一部の職業や資格が制限される可能性がある
- 個人再生
- ほとんど影響はない
- 任意整理
- ほとんど影響はない
- 自己破産
- 原則として住宅を売却しなければならない
- 個人再生
- 住宅ローンを残したまま手続を進めることができる場合がある
- 任意整理
- 住宅ローンを残したまま手続を進めることができる
- 自己破産
- 保証人へ請求される
- 個人再生
- 保証人へ請求される
- 任意整理
- 任意整理の対象から外せば、影響はない
自己破産の最大の特徴は、借金の返済が免除されるという点です(これを免責といいます)。滞納税金など一部免除されないものもありますが、銀行や消費者金融のカードローンや使いすぎてしまったクレジットカードなど、その方に問題がなければおおよその借金は全額免除してもらえます。
任意整理は基本的に借金の減額はできません。
個人再生は5分の1程度へ減額(※借金額によって割合は変動します)されます。
財産を残せるか
自己破産では、基本的に一定以上の財産を手放す必要があります。生活に必要な最低限の財産(一定額の現金、預金など)は保護されます。
一方、任意整理では財産を手放す必要はありません。
個人再生は、自宅などの財産を残せる場合がありますが、ローン返済中の車など残せない財産があります。
官報公告へ掲載されるか
自己破産と個人再生は裁判所を通じた手続のため、官報に氏名と住所が掲載されます。一般の人が官報を見る機会は少ないですが、心理的な負荷を感じる方もいます。
任意整理は裁判所を通さないため、官報に掲載されることはありません。
仕事への影響
前述のとおり、自己破産は一部の職業(警備員や保険外交員など)に一定期間就けなくなる可能性があります。
任意整理や個人再生では職業制限はありません。
住宅ローン
自己破産では家を手放す可能性が高いです。
任意整理は住宅ローンを支払いながら、借金の整理をすることが可能です。
個人再生は「住宅資産特別条項」を利用すれば、住宅ローンがあっても自宅を保持できる可能性があります。
保証人への影響
自己破産をすると、保証人が借金の肩代わりすることになります。
個人再生の場合も同様で、借金は原則保証人へ一括請求されます。
任意整理は、個人再生や自己破産とは異なり、任意整理の対象とする借入を選択することができます。そのため、保証人がついている借入のみ任意整理の対象から外してしまえば、保証人への影響はありません。
*どの債務整理を利用すべきか更に知りたい方は下記もご覧ください。
まとめ
自己破産は、借金問題から解放されるための手段の一つですが、デメリットもあり、判断ができずに躊躇してしまう方も多いでしょう。弁護士などの専門家に相談し、ご自身の状況に合った最善の解決策を見つけることが大切です。
江原総合法律事務所では借金に関する相談を承っております。初回は無料ですので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。あなたに適した借金の解決方法を提案いたします。
お客様の声も掲載していますので、ぜひご覧ください。
*本記事は、一般的な情報提供を目的としており、個々の事情に応じたアドバイスではありません。より詳しい情報が必要な場合は、弁護士にご相談ください。
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この記事の監修者
弁護士 黒澤 洋介
注力分野:管財事件、個人破産、個人再生(個人再生委員含む)

茨城県出身。横浜国立大学法科大学院卒業。埼玉弁護士会所属。
コメント:
近年は、裁判所から選任される破産管財人としての職務も多く、多方面で経験を積んでいます。法人破産などの中・大規模案件は所内でチームを作り、複数名の体制で対応することも可能です。まずはご相談ください。