自己破産手続による生活面での影響

自己破産とは、分かり易く言うならば、「これ以上借金の返済ができない」という状況になったときに、自ら(又は代理人によって)裁判所に申し立て、(生活に必要な一定の財産を除く)裁判所の関与の下で、高価な財産を売却などによってお金に換え、債権者に分配するかわりに、残った分の借金を帳消しにしてもらう制度です。

このように、自己破産は、住宅ローンや消費者金融からの借り入れ、クレジットカードの返済など、多額の借金を抱えて苦しんでいる方々が生活を立て直すための最後の切り札になります。

 

しかし、申し立てをすれば誰でも自己破産ができる訳ではありません。

 

「支払い不能の状態である」と裁判所に認められることが必要です。

 

裁判所は、自己破産の申立人が支払い不能状態であるか否かについて、借金の総額、借り入れの理由、保有している資産、収入、年齢、健康状態など様々な事情を考慮して判断します。

 

ほとんどの場合認められますが、例えば手元に100万円の現金があるのに対し、借金が90万円では、破産は認められません。また、月収100万円の人に借金120万円がある場合でも破産は認められにくいでしょう。

 

反対に、借金の総額が、手元の資産を大きく上回っている場合には、支払不能と認められやすいと言えます。

 

破産手続きでは、保有している財産の内、価値の高いものはお金に換えて債権者に分配されるため、住宅等の不動産・自動車の中でも価値のある財産があれば、手放さなければなりません。

 

ここで、価値の高い財産とは、原則として、お金に換えた際に、20万円を超えるかという観点から判断されます。

以下では、自己破産手続を行った場合の生活上の影響について解説していきます。

 

大きく分けると、①破産手続全般における生活上の影響、②破産手続において破産管財人が選任された場合の生活上の影響に区別できます。

 

1 破産手続全般における生活上の影響

① 新たな借入ができなくなる

破産の情報は信用情報機関に登録されます。そのため、破産手続をすることを債権者に通知した後に新たな借入をすることはできなくなります。

また、破産することを計画し、返済ができないにもかかわらず、返済することを装って債権者からお金を借りることは、債権者をだましてお金を借りたとして詐欺罪と評価される場合があります。

 

② クレジットカードの利用はできなくなる

弁護士が破産手続を行う旨の通知を債権者に出した以降はクレジットカードの利用はできなくなります。

また、破産手続が終了した後、一定期間が経過し、信用情報が回復するまでは、新規でクレジットカードを作成することもできません。

 

③ 携帯電話やスマートホン端末の分割払いでの購入ができなくなる

携帯電話やスマートホン端末(iPhoneなど)を分割払いで購入する際にも信用情報が問題となります。

そのため、破産手続の申し立てを行う場合、携帯電話やスマートホン端末を分割払いで購入することはできなくなります。信用情報が回復するまでの間は、端末を一括払いで購入することになるでしょう。

 

なお、現在使っている携帯電話やスマートホンは、破産手続を申し立てた後でも引き続き使用することができます。

携帯電話やスマートホンの端末代の分割払いが残っている場合、法律上は破産債権として扱われることとなりますが、裁判所の運用によってはそのまま支払いを継続し、使い続けることができる場合もあるようです。

 

④ キャリア決済を控える必要がある

キャリア決済とは、NTTドコモ・au・ソフトバンクなどの携帯電話やインターネット回線などの通信キャリアと契約している利用者が、通信料金と一緒にネットショッピングなどの代金を支払うことができるサービスのことをいいます。

例えば、NTTドコモの利用者が、d払いを利用してネットショッピングの代金を、スマートホンの通信料金と併せて支払うケースが挙げられます。

キャリア決済も後払いの一種であり、破産手続の対象となる借金に該当しますので、弁護士に破産手続の申立てを依頼してから破産手続が終了するまではキャリア決済を控える必要があります。

 

⑤ 新たに賃貸物件を借りる際に、借りられる物件が限定される

破産手続を申し立てたとしても、新たに賃貸物件を借りること自体は問題ありません。

もっとも、賃貸借契約にあたり賃貸人が保証会社による保証を要求する場合には、保証会社の審査が通らず、当該物件を借りられない可能性はあります。

このような場合は、保証会社が必須でない賃貸物件を探すしかないでしょう。

 

なお、破産の申立てをした後でも、原則として、契約中の賃貸物件にそのまま住み続けることはできます。ただし、家賃の滞納などがある場合には、賃貸借契約の解除原因となり退去を求められる場合もあるため、ご注意ください。

 

⑥ 借金がある金融機関に保有している預金口座が凍結されることがある

破産の申立てをした後でも、原則として、金融機関の預金口座はそのまま利用することができます。ただし、その金融機関に対して借金がある場合、弁護士が受任通知を出した際に、預金口座が凍結され、預金口座の残高と借金が相殺されることがあるので注意が必要です。

 

⑦ 家計簿を作成しなければならない

破産手続の申し立てにあたり、債務者の収入や支出を明らかにするために、1か月間の家計の収支を記載した家計簿を作成していただく必要があります。

また、破産手続中でも、引き続き家計簿を作成し、手続中の給与明細や光熱費を支払った領収書などの提出を求められる場合があります。なお、管財人が選任されない同時廃止の事件の場合でも、裁判所からの指示により、家計簿を作成する場合もあります。

 

2 破産管財人が選任された場合の生活上の影響

自己破産手続により、債務者の債務を免除するということは、債権者には犠牲が伴います。

そのため、破産手続において破産管財人が選任された場合には、債務者は一定の制約を受けることになります。

 

ただし、下記①~③の制限は、破産手続が終了するまでの期間だけです。同時廃止手続の場合には、手続開始と同時に終了になりますので、実際は制限がありません。

どのような場合に管財手続となるかについては、こちらの記事をご覧ください。

 

また、④の資格制限についても、免責が決定すれば制限がなくなります

したがって、制限があるというものの、実際には日常生活への影響は大きくありません

 

① 一定価値の財産の管理処分権を喪失する

破産手続が開始されると、債務者が保有している不動産などの財産を債務者が勝手に処分することはできなくなります。

破産手続の開始後に、債務者の財産を管理するのは、裁判所に選任された破産管財人です。

破産管財人は、債務者の財産を管理し、その財産をお金に換えて債権者に配ります。

 

もっとも、全ての財産を管財人が管理することにすると、債務者の生活が成り立たなくなるため、一定価値以下の財産(99万円以下の財産)については、債務者が管理をすることができます。

そうすると、「破産手続の開始される直前に財産を処分すれば問題ないのではないか?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、その場合、財産の処分行為の効果が破産手続の中で否定され、管財人にその財産を回収される可能性が高いです。そのため、破産を決めた後は、高価な財産の処分はしないようにしてください。

 

 

② 住居移転、長期の旅行が制限される

原則として、裁判所の許可がなければ、住居の移転や長期の旅行・海外旅行はできません。

これは、債務者が破産手続中に逃亡をしたり、連絡がとれなくなることを防ぐためです。

事前に転居の予定がわかっている場合には、破産手続き前に弁護士に相談し、破産申立ての時期をずらすなどの対応をとるなどの方法が考えられます。

 

③ 破産管財人によって郵便物が管理される

破産手続において破産管財人が選任される場合には、債務者宛の郵便物が破産管財人宛てに転送されることになります。転送された郵便物は管財人が開封して、内容をチェックします。

これは、浪費や財産隠しがないか、他に債権者がいないかなどを確認するためです。

破産管財人に届いた郵便物は、破産管財人から債務者に返還されますが、郵便物を受け取るまでに時間がかかることになります。

税金、電気代やガス代等の請求書が郵便で届く場合には、支払期限などに注意が必要であり、事前に支払方法を変更しておくことも考えられます。

 

④ 資格が制限される

一部の資格が制限されます。

具体的には、弁護士、司法書士、税理士、宅地建物取引士、警備員、保険外交員など、職務上、他人の財産を扱う仕事は、資格が制限されることになります。

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この記事の監修者

弁護士 松本 侑樹

注力分野:法人破産,個人破産,個人再生

弁護士 松本侑樹

埼玉県出身。中央大学法科大学院卒業。埼玉弁護士会所属。

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