【早わかり】借金減額は本当に可能?弁護士が徹底解説します
「借金を減らしたい」「返済の負担を少しでも軽くしたい」と悩んでいませんか?インターネットや広告では「借金を減額できる」とよく見かけますが、実際にはどの制度でどこまで減らせるのか分かりにくく、誤解されやすいのが現実です。
借金問題には解決の道があります。正しく制度を理解し、自分に合った方法を選べば、生活を立て直すことは十分可能です。
この記事では、「借金減額」が実現できる手続と、借金は減らないものの「月々の返済額を見直す(減額する)方法」を整理して解説します。最後までお読みいただければ、今の状況に合った現実的な解決策を見つけるためのヒントが得られるでしょう。
目次
1. 借金の減額とは?誤解されがちなポイント
「借金を減らしたい」「減額できる手続があると聞いたけれど本当なのか?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。近年では「借金を減額」といった広告を目にすることも少なくありません。ですが、実際には誤解されやすい点が数多くあります。ここではまず、借金減額の基本と、よくある勘違いについて整理します。
1-1 借金は本当に減額できるのか?
「借金を減額できる」と聞くと、多くの人は「借金の元金そのものが減る」と考えるかもしれません。
しかし実際には、借金は減額できる場合と、できない場合があります。
たとえば「個人再生」という手続を利用すれば、借金が5分の1程度まで減額されることがあります。500万円の借金が100万円にまで下がるケースもあるのです。
一方で「任意整理」は、将来の利息をカットしたり返済回数を調整したりするのが中心であり、元本そのものは減らないのが一般的です。
つまり「借金減額」といっても、実際には①元本を減らせる手続と、②返済負担を軽くすることが中心の手続があるのです。
1-2 「任意整理では減額が難しい」実務上の事実
任意整理は、債権者と交渉して「将来の利息をカットする」「毎月の返済額を下げる」ことがメインです。あくまで債権者との任意の交渉で合意を得る形のため、元本の減額は基本的にできません。
たとえば、300万円の借金がある人が任意整理を行い、毎月の支払いが7万円から5万円(60回払い)に減ったとします。この場合、月々の返済額は減りますが、返済総額は300万円のままです。数字の上では「減額」ではなく「返済条件の緩和」にあたります。
任意整理は誤解されやすい制度ですが、正しくは「借金減額」ではなく「返済計画を立て直す」ための方法です。したがって、「借金 減額」という言葉のイメージと、実際の任意整理の効果にはギャップがある点に注意が必要です。
1-3 借金減額を実現できる法的手続(個人再生・自己破産)
「借金そのものを減額」できるのは、個人再生や自己破産といった裁判所を通じた法的手続です。これらは法律に基づく制度であり、裁判所の決定によって借金を大幅に減らしたり、返済義務そのものを免除してもらうことができます。
「借金を大幅に減らす」「ゼロにする」ことを目指すなら、個人再生や自己破産のような法的手続が欠かせません。
では次の章で、借金減額を実現できるこれらの法的手続について、具体的に解説していきます。
2. 借金の減額が可能な2つの手続
ここからは、実際に借金を減額できる代表的な手続について、仕組みや条件を解説します。
2-1 個人再生|借金を大幅に減額できる仕組みと条件
個人再生は、裁判所を通じて借金の元本を大幅に減額できる制度です。安定した収入があることが前提ですが、条件を満たせば借金総額を大きく圧縮し、原則3年(最長5年)で分割返済する計画が認められます。
減額できる割合や金額は状況によって異なりますが、一般的には住宅ローン以外の借金はおおむね5分の1に減ります(ただし最低弁済額は100万円とされています)。
さらに「住宅ローン特則」を利用すれば、マイホームを手放さずに借金を減額できる場合もあります。「借金を減額すること」を目指すなら、個人再生は非常に有効な選択肢となります。
2-2 自己破産|借金をゼロにできる仕組みと注意点
自己破産は、返済の見込みが立たない場合に裁判所へ申し立てを行い、免責許可を受けることで借金を帳消しにできる手続です。
たとえ借金が1,000万円あっても、免責が認められれば返済義務はなくなります(税金など一部例外はあります)。ただし、一定の財産は処分しなければならず、また職業や資格によっては一時的に制限を受けるケースもあるため注意が必要です。
借金を「減らす」のではなく「ゼロにする」ことを可能にする、最終的な救済手段が自己破産です。
2-3 借金減額に成功した事例
個人再生と自己破産はいずれも裁判所を通じて行う法的手続であり、一定の条件を満たせば借金の大幅な減額や返済義務の免除といった強い効果を得ることができます。
「本当に借金が減るのか?」と不安に感じる方も多いですが、実際には個人再生や自己破産によって借金が減額されたり、返済義務が免除されたりした事例は数多く存在します。
3. 借金の減額は難しいが返済負担を軽くできる手続
借金を「減額」できる手続は個人再生や自己破産ですが、それ以外にも返済の負担を軽くできる制度があります。ここでは「減額」というより「返済計画の調整」にあたる手続を紹介します。
3-1 任意整理|利息カットと分割返済で月々の負担を軽減する方法
任意整理は、裁判所を通さずに貸金業者等と直接交渉し、返済条件の見直しについて合意を得る方法です。借金の元本を減らすことはできませんが、弁護士や司法書士が交渉することで 将来利息をカットしたり、返済を分割にしたりすることが可能になります。その結果、毎月の返済額を抑えることができます。また、いつまで返済をすればよいのか、先の見えない返済をするのではなく、返済のゴールが明らかにになりますので、返済の動機付けにもなります。
「借金を減らす」手続ではありませんが、毎月の支払いを軽くできるため、家計を立て直す有効な手段となります。
3-2 特定調停|債権者と合意して返済計画を見直す
特定調停は、裁判所を介して債権者と返済条件を見直す制度です。調停委員が間に入り、債務者と債権者の話し合いをサポートします。合意が成立すれば、その内容に従って返済を進めることになります。ただし、あくまで「調停=話し合い」であるため、必ず元本が減るわけではありません。 返済期間の延長や利息の調整といった内容にとどまるケースも多い点に注意が必要です。
3-3 実際に「減額」ではなく「返済計画の調整」に近いことを理解する
任意整理や特定調停は「借金が減る」と誤解されがちですが、実務上は返済しやすくするための調整です。
「借金が減る」と思って任意整理をしたものの、実際には返済総額はそのままで、「思ったほど楽にならなかった」というケースもあります。
そのため、「借金の元本を減額したいのか」「毎月の返済を楽にしたいのか」を整理することが、正しい手続を選択するための第一歩です。
4. 債務整理の方法を検討する判断基準3つ
借金減額の制度は複数ありますが、どれを選ぶべきかは人それぞれです。ここでは、自分に合った方法を考えるための判断基準を整理します。
4-1 借金総額と収入のバランスで考える
借金の返済方法を選ぶ際には、借金総額と収入のバランスを見て、現実的に返済できるかどうかを考えることが重要です。
収入に比べて借金が大きすぎる場合、任意整理では追いつかず、個人再生や自己破産といった法的手続が必要になるケースもあります。
たとえば200万円の借金がある場合でも、年収500万円の人と年収100万円の人とでは選択肢が異なります。年収500万円であれば、任意整理によって返済条件を見直すことで返済できる可能性がある一方で、年収100万円であれば返済が現実的に難しく、自己破産を検討せざるを得ない場合もあります。
このように、「借金の金額」と「収入」を冷静に比べて判断することが、適切な解決方法を選ぶためには欠かせません。
4-2 住宅や車など残したい財産がある場合
マイホームや自動車など、手放したくない財産がある場合には、選べる手続が限定されます。
たとえば、自己破産では原則としてマイホームを残すことはできません。一方で、個人再生であれば「住宅ローン特則」という制度を利用することで、マイホームを維持しながら他の借金を大幅に減額できる可能性があります。
実際に、住宅ローンを抱えたまま個人再生を行い、他の借金を減額してマイホームを維持できたケースは数多く存在します。
つまり、「守りたい財産」があるかどうかは、手続の選択を大きく左右する重要な判断基準です。逆に、資産を維持する必要がなければ、自己破産によって借金問題を一気に解決する道も考えられます。
4-3 自己破産ができない理由がある場合
自己破産の手続中は、保険の外交員や警備員など一部の職業や資格に制限がかかります。制限対象の仕事に就いている場合、その期間は業務ができなくなるため、自己破産以外の選択肢を検討する必要があります。
また、借金の原因が競馬やパチンコなどのギャンブル、浪費などである場合には、免責(借金の返済義務を免除してもらうこと)が認められない可能性があります。その場合も、個人再生など別の手続を考えることが求められるでしょう。
こうした判断は専門的で難しいため、実務経験のある弁護士に相談するのが確実です。
5. 借金減額の流れと準備すべきこと
「借金を減額したい」と思ったとき、あらかじめ必要な準備をしておくことで手続がスムーズになります。ここでは、手続の流れと準備すべきことを整理します。
5-1 借金一覧表を作成する
まずは自分が抱えている借金の全体像を整理しましょう。
どの債権者からいくら借りているのか、返済日、毎月の返済額、滞納の有無を把握しなければ、適切な手続を選ぶことができません。
- 残高200万円
- 返済日:末日
- 月2万返済
- 滞納2か月
- 残高100万円
- 返済日:25日
- 月5000円返済
- 滞納1か月
こうした一覧表を作ることで、「利息が高い借金が負担になっている」「滞納が続くと差押えの危険がある」など、問題点が見えてきます。借金一覧表は専門家に相談する際も必要な資料となります。
5-2 弁護士に相談する際のポイント
借金減額の手続を検討する際は、弁護士に相談することが最も確実な方法です。
弁護士であれば、制度ごとのメリット・デメリットを比較したうえで、相談者に合った最適な解決方法を提案してくれます。
個人再生や自己破産を考えている場合には、ご自身の地域で実績のある弁護士を選ぶことがおすすめします。なぜなら、裁判所によって細かい運用部分が異なるため、経験豊富な弁護士の方が実務に即したより具体的なアドバイスを行えるからです。
そのほかにも費用が明確かどうか、対応が丁寧で相談しやすいかという点を意識して弁護士を選ぶとよいでしょう。
6. 借金 減額に関するQ&A
借金減額を考える人からよく寄せられる疑問をまとめました。
- 借金減額は本当にできますか?
- はい、可能です。ただし「個人再生」や「自己破産」といった裁判所を通じた法的手続が必要です。「任意整理」では元本はなかなか減りませんが、これまでの返済実績を考慮した上で、利息カットや返済期間の延長で負担を軽くすることはできます。
- 債務整理の手続にはどれくらいの時間がかかりますか?
- 事案により異なりますが、個人再生や自己破産は準備を整え裁判所に申立をしてから6か月〜1年程度かかるのが一般的です。任意整理は、個人再生や自己破産と比較すると短期間で交渉がまとまるケースが多いです。
- 借金減額をするとブラックリストに載りますか?
- はい、任意整理、個人再生、自己破産のいずれでも信用情報に記録され、5〜10年程度はクレジットカードやローンの利用が制限されます。
- 借金減額の手続をすると家族や勤務先に知られますか?
- 任意整理なら原則として知られることはありません。
個人再生や自己破産は住所、氏名が官報に掲載されますが、一般の人が目にする機会は少なく、勤務先に伝わる可能性は低いです。同居の家族は、給与明細や住民票などの書類取得が必要になるため、最低限の協力を求められることがあります。
弁護士コラム:自己破産した場合の家族への影響は?大切な家族を守るポイント - 借金減額を依頼するなら弁護士と司法書士どちらがいいですか?
- 司法書士には一定の制限があり、個人再生や自己破産では書類作成のみ対応可能で、代理人になることはできません(代理とは、裁判所との連絡や書類の提出など必要な基本的手続を委託することをさします)。また、任意整理では1社あたり140万円以下の案件のみ取り扱えます。
一方、弁護士にはこうした制限がなく、すべての債務整理に代理人として対応可能です。そのため、借金総額が大きい場合や個人再生・自己破産を検討している場合は、弁護士に依頼するのが安心です。
7. まとめ
ここまで「借金減額」について、誤解されやすい点から具体的な手続、準備や注意点まで解説してきました。
借金問題には解決の道があります。正しい制度を利用すれば、借金を減額して生活を立て直すことは十分可能です。そのためには、正しい理解で手続を選び、早めに専門家へ相談することが欠かせません。
借金問題を放置すればするほど状況は悪化します。滞納が続けば遅延損害金が発生し、貸金業者によっては裁判を起こされることもあります。
借金の悩みを本当に解決するためには、「早めに」「正しい制度を選び」「専門家に相談する」ことが何よりの近道です。
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この記事の監修者
弁護士 黒澤 洋介
注力分野:管財事件、個人破産、個人再生(個人再生委員含む)

茨城県出身。横浜国立大学法科大学院卒業。埼玉弁護士会所属。
コメント:
近年は、裁判所から選任される破産管財人としての職務も多く、多方面で経験を積んでいます。法人破産などの中・大規模案件は所内でチームを作り、複数名の体制で対応することも可能です。まずはご相談ください。