債務整理の種類・比較
目次
債務整理(借金整理)の種類・比較
借金に関する問題は、借金の金額はもちろん、借りた貸金業者も人によって違います。
また、借りた年数や利息、収入や資産も違います。
そのため、借金問題を解決するためには、あなたの経済的な状況に応じて、正しい債務整理(借金の整理)の方法を選ばなければなりません。
借金問題の解決方法には大きく分けて、①自己破産、②個人再生、③任意整理という方法があります。
また、借金をした時期や期間、利率によっては、④過払い金が発生していることもあります。
過払い金が発生している場合には、借金の額を減らしたり、反対に払い過ぎたお金(利息)を業者から取り戻せたりする可能性があります。
ここでは、これらがどのような方法なのか、また、それぞれのメリットとデメリットについて概要をご説明します。
債務整理の比較表
債務整理の種類 | 特 徴 |
自己破産 | 裁判所に申立てをして、借金の返済を「全額免除」(借金を0円にする)してもらうことで、経済的な再出発を図る手続です。 |
個人再生 | 裁判所に申立てをして、借金の金額を圧縮(減額)してもらい、圧縮された借金を3~5年の期間内に返済していく手続です。 |
任意整理 | 依頼を受けた弁護士が、直接、債権者と示談交渉し、借金の総額を減額し、分割払い等の支払方法を協議するなどして、借金を整理する手続です。 |
過払い金返還請求 | 借金をしていた業者に対して、払い過ぎた利息がある場合、その利息分(過払金)を取り戻す手続です。 |
自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
借金がどれくらい減るの? | 全額免除(0円) ※税金などの例外あり | 5分の1程度へ減額 ※借金の残高により変動 | 利息部分カット |
財産は保有し続けられるの? | 最低限生活に必要な財産は残せるがそれ以外は不可 | 可能 ローン支払い中の車など | 可能 |
官報公告へ掲載されるの? | 掲載される | 掲載される | 掲載されない |
仕事への影響は? | 一部制限あり | 制限なし | 制限なし |
住宅ローン負担のある自宅への影響は? | マイホームを失う | 住宅ローン特則により 支払継続して住み続けることが可能 | なし (債権者を選べる) |
保証人への影響は? | 保証人へ一括請求 | 保証人へ一括請求(原則) | なし (債権者を選べる) |
江原総合法律事務所の場合、 弁護士費用はいくら? | 31万9000円(税込) +事務手数料1万1000円(税込) | 31万9000円(税込) 住宅資金特別条項利用の場合 +11万円(税込) | 料金 1社あたり 5万5000円(税込)+事務手数料5500円(税込み) ※消費者金融・クレジット会社の場合 |
【注意事項】
※上記の表はあくまでわかりやすさを重視した目安となるものです。実際の案件とは異なることがあります。
※事案によって上記の表と異なることがありますので、詳細は相談時に弁護士にご質問ください。
自己破産
裁判所に申立てをして、借金の返済を「全額免除」(例外もあります。)してもらうことで、借金の問題を解決し、経済的な再出発を図る手続です。
②個人再生や③任意整理の借金の整理方法とは異なり、自己破産では、借金の金額にかかわらず、税金や養育費など法律上免除されないもの(これらを非免責債権といいます。)を除いて、手続後は、借金の返済をする必要がありません。これを免責といいます。字のごとく「借金返済の責任を免除する」という意味合いです。
この点が借金解決方法の一つである自己破産の最大のメリットといえます(もちろん免責が許可されないケースもあります)。
一方で、デメリットとして考えられるのは、主に以下が挙げられます。
- 一定額以上の財産(資産)がある場合には、それを借金の返済相手である債権者への配当原資とするため手放す必要がある
- 生命保険募集人や警備員など、一部の職種では、破産手続が終了するまでの一定期間、資格の制限を受ける
- 裁判所を利用する手続となるので、必要書類を用意する必要がありある程度の時間がかかる
- 破産者の個人情報が官報に記載されるため、官報を閲覧した方には破産した事実を知られてしまう
個人再生
裁判所に申立てをして、借金の金額を圧縮(減額)してもらい、圧縮された借金を3年から5年の期間内に返済していく手続です。
個人再生手続では、元本を含め借金の総額を法律の規定に従い、大幅に減額してもらうことが特徴です。
この点が、同じく債権者に借金を返済していくことになる③任意整理の手続(後述)とは異なります。
任意整理手続は、借金の総額のうち一定額を返済する点では個人再生と同じです。しかし、あくまで任意の交渉ですので、借金の元本自体をカットしてもらうことは難しいといえます。
個人再生手続の場合、減額幅は、借金の総額や現実に保有している資産の総額などにもよりますが、利息のみならず元本も含め、5分の1程度まで借金を減額してもらえる可能性があります。もちろん例外もあります。
さらに、個人再生手続のメリットとして、同じ借金整理方法である①自己破産手続とは異なり、マイホームを手放さずに手続を進める可能性があることが挙げられます。
各種法律上の条件を満たす必要はありますが、圧縮された借金の返済に加え、住宅ローンの支払いを別途継続することによってマイホームを確保できる可能性があるのです(「住宅資金特別条項」といわれます)。
一方、デメリットとして考えられるのは、自己破産手続と同じく裁判所を介しての手続となるため、手間と時間がかかること、官報に住所氏名が掲載されることです。
ただし、破産手続と違って資格制限はありません。この点は大きな違いです。)。
任意整理
依頼を受けた弁護士が、直接借金の相手である債権者と示談交渉し、借金の総額を減額し、分割払い等の支払方法を協議するなどして借金を整理する手続です。
①自己破産や②個人再生の借金整理方法とは異なり、任意整理は「任意」ですから、裁判所の手続ではない点に特徴があります。
借金の支払総額や支払方法について、弁護士が借金の相手である貸金業者などの債権者と交渉し、借金の残高について実際に支払い可能な返済条件で合意を取り付けます。
合意後の利息(返済期間中の将来の利息)をカットしてもらえる可能性があるため、最終的に「いくら」を「いつまで」支払えばよいかが明確になり、借金の完済というゴールを設定することができます。
多くの方は、借金のおおよその残高は把握できていても、その借金の返済がいつ終わるのか、そのゴールが分かっていないことがほとんどです。
ゴールが分からないまま借金の返済を続けることはご自身やご家族の将来設計にも影響しますし、見通しが立たないことでエネルギーを消耗し、借金返済による相当なストレスを抱えることになります。
任意整理のメリットは、①自己破産や②個人再生とは異なり、交渉する借金の相手方(債権者)を自ら選択して手続きを進める点にあります。
つまり、特定の債権者を交渉対象から外すといった柔軟な対応ができるのです。
例えば「ある債権者については借金の保証人に迷惑をかけたくないから、継続して借金の支払をしていきたい。そのため交渉から除外したい」といったようなケースです。
もっとも、任意整理では、個人再生のように借金の総額を大幅に減額することは困難です。
また、裁判所を利用しない任意の交渉であるため、強制的に合意を取り付けるということはできません。
借金の返済金額や返済方法について債権者が同意しない場合は、①自己破産や②個人再生といった手続の選択を検討することになります。
字のごとくあくまで「任意」整理という任意による借金整理方法ですので、限界があります。
過払い金返還請求
借金をしていた業者に対して、払い過ぎた利息がある場合、その利息分(過払金)を取り戻す手続です。
この手続には、以下2つのケースがあります。それぞれ概要を説明します。
- 現在借金が残っている場合
- 過去に借金を完済した場合
1. 現在借金が残っている場合
現在借金が残っている場合、借金の整理方法である自己破産や個人再生、任意整理を行うことが考えられます。
そして、各手続を進めるにあたっては、借金の相手方である債権者に対し個別に債務(借金)の調査を行います。
その調査の過程で、過払金の発生が判明することがあります。
過払金が発生している場合、その過払い金の金額と、借金の残高と相殺することで借金を減額できる場合があります。
債権者に対する借金残高が0円になり、反対に借金していた業者に対して過払金の返還を請求できる場合もあります。
2. 過去に完済した場合
過去に借金をしていたが、現在は、借金を完済しているという場合でも、一定の条件はありますが、過払金が発生していることがあります。
債権者から説明されたとおりの金額(借金の額)を完済した場合でも、改めて、法律に従い再計算しなおすと、債権者に借金の利息を支払い過ぎていた(支払義務以上の金銭を支払っていた)ということもあります。
このように借金の利息を返済し過ぎた場合、当該業者に対し、払い過ぎた金銭である「過払い金」が発生しているか調査するため過去の「取引履歴」の開示を請求することができます。
すでに借金を完済している場合、このような借金を開始したときからの一連の取引履歴の開示請求や過払い金の返還請求を行うことで信用情報に登録される心配はありません。
過去に借入をしていたが、現在は借金を完済したという業者がいる場合、過払い金が発生している可能性もありますので一度、弁護士にご相談することをお勧めします。
どの債務整理を利用すべきか
1. 前提事実を整理する
債務整理の方法を考えるにあたり、まずは以下のような前提事実を整理する必要があります。
① どの業者に対して、いくらの借金が残っているか
② 収入状況、今後の継続的な収入の見込み
③ 家族構成、支出の状況
④ どのような財産を保有しているか(住宅、自動車の有無)
⑤ 職業(資格制限がある職種かどうか、給与所得者か、個人事業主か)
⑥ 借金の原因
⑦ 保証人がいるか
⑧ 債務整理に対するお客様の意向(できれば破産したくない、なるべく返済額を減らしたい、など)
2. メリット・デメリットを理解する
次に、整理した前提事実をもとにして、任意整理、個人再生、自己破産のメリット・デメリットを理解することが重要です。
各手続きのメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
3. 手続選択の基本的な考え方
⑴ 一番重要なのは借金額と収入
どの債務整理を選択するかにあたり、最も重要な考慮要素は、お客様の借金の金額とお客様の収入です。
例えば、お客様に継続的な収入がなく、月々一定額を返済していくことが難しい場合には、自己破産を選択せざるを得ないでしょう。
お客様が自己破産を回避することを希望していたとしても、現実的に任意整理や個人再生の方法で継続的に返済していくことが難しい場合には、お客様のご意向に沿えないケースもあります。
逆に、お客様が自己破産を希望していたとしても、借金の金額が少額であり、相応の収入がある場合には自己破産が難しいケースもあります。
このように、お客様の借金額と収入によっては、選べる債務整理が最初から限定されてしまう場合があります。
⑵ 任意整理が可能かどうかを考える
複数の選択があり得る場合、任意整理が可能かどうかを考えます。
任意整理が可能かどうかは、お客様の借金の金額、借金をしている業者名、借り入れから債務整理までの期間、お客様の収入・支出の状況、家族構成、今後のライフプラン、お客様のご意向を考慮して、月々の収入から、借金を長期分割で返済していく余剰を生み出せるかを検討します。
大まかな考え方としては、まず、借金の総額を36回(3年)で分割して支払う場合に月々に必要となる返済額を計算します。
次に、お客様の収入からの月々の余剰(返済原資)を計算します。
返済原資の一応の目安は、月々の手取り収入から住居費を除いた金額の3分の1の金額といわれています。
ただし、月々の余剰はお客様の生活状況により様々です。
現在の収入と支出だけでなく、将来的な支出の見込みも考慮して具体的に検討する必要があるでしょう。
月々の返済額と返済原資を比較した上で返済原資が上回るようであれば、任意整理で解決できる可能性があります。
⑶ 自己破産か個人再生かを考える
任意整理が難しい場合には、自己破産か個人再生を検討する必要があります。
この場合、まずは自己破産を検討すべきでしょう。
なぜなら債務整理はお客様の借金問題を解決して経済的に再出発することを目的とするものですから、自己破産により借金が0円になることが最も効果的といえるからです。
自己破産を検討した上で、自己破産を回避したい理由がある場合には、個人再生を検討します。
具体的には、以下の場合などが挙げられます。
- 住宅ローンがあり自宅を残したい場合
- 自己破産では資格制限がある職業についている場合
- ギャンブルや浪費で多額の借金を作ってしまい免責不許可事由がある場合
各手続を選択すべき主なケース
⑴ 任意整理を選択すべき主なケース
- 複数の債権者のうち、一部の債権者についてのみ、支払いが困難になっているような場合
- 一定の収入があり返済はしているが、利息が高く元本が減らず長期間返済している場合
- リボ払いを多用したため、いつ借金の返済が終わるのかわからなくなってしまっている場合
- 特定の債権者のみ手続きから除外したい場合(例えば、親族が保証人になっている借金について、債務整理を行ってしまうと保証人に迷惑がかかってしまう)
債権者と合意できない、ご自身の収入状況・返済能力を考慮して、借金を完済することが難しいようであれば、より強力な手続である個人再生手続や自己破産手続を検討することになります。
⑵ 自己破産を選択すべき主なケース
- 怪我や病気などで働けない状況にある、生活保護受給中であるなど、借金の返済が困難であることが明らかな場合
- 収入や資産に比して、継続的な支払いが困難であって、個人再生や任意整理の利用が困難である場合
⑶ 個人再生を選択すべき主なケース
- 住宅ローン支払継続中のマイホームを残したい場合
- 自己破産手続をとることに強い抵抗がある場合
- 自己破産手続での資格制限を受ける職種である場
- 免責不許可事由があり、自己破産の選択が難しい場合
個人再生はメリットの多い手続であるが故に、将来にわたって安定した収入が見込まれる方でなければ、利用することができないなど一定の条件があります。
また、そもそも収入が少なく、3年から5年の期間で法律により減縮された借金を完済できる見込みがない場合には個人再生手続の選択は難しく、多くの場合自己破産を選択せざるを得ないでしょう。
どの債務整理を利用すべきかを検討するにあたって、まずご自身でどの業者からいくら借金があるのか、他方でご自身にどういった財産があるのか等基本的な事実関係を把握する必要があります。
その上で、前述したそれぞれのメリット・デメリットを考慮して決定します。
弁護士に依頼することで得られる効果
債務整理のご依頼をいただいた場合、弁護士は各債権者に対して受任通知を送付します。
受任通知とは、弁護士が債務整理手続の代理人になったことを債権者に伝えるものであり、この発送により、次のような効果があります。
1. 取立てが止まる
貸金業者や債権回収会社などの債権者は、弁護士による受任通知を受領すると、電話・訪問などによる返済を求める行為つまり取立てが禁止されます。
これは、貸金業法やサービサー法によって定められたルールです。
債権者から厳しい取立てを受け、精神的に追い詰められてしまう方も少なくありません。
「債権者からの取り立てがなくなっただけで、気持ちが楽になった」という方も多くいらっしゃいますので、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。
2. 取引履歴の開示を請求する
弁護士は受任通知の発送の際、併せて過去の取引履歴の開示を請求します。
開示された取引履歴をもとに、借金額を利息制限法に従い再計算し、過払金の有無を確認するとともに、現在の正確な借金額を把握します。
正確な借金額を把握することで、将来の具体的な返済の見通しを立て、どの債務整理手続をとるべきか検討します。
この記事の監修者
弁護士 江原 智
注力分野:法人破産,個人破産,個人再生など
埼玉県出身。弁護士法人江原総合法律事務所代表弁護士。埼玉弁護士会所属。
コメント:
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