自己破産にかかる費用を解説:裁判費用から弁護士費用までわかりやすく紹介


電卓とペン
 

 自己破産は借金問題から解放される有効な手段ですが、手続を進めるにはいくつかの費用がかかります。
 自己破産を考えていても、実際にどういった費用がどれくらいかかるのか分からないとなかなか一歩前に踏み切ることは難しいものです。
 裁判所に支払う費用、弁護士へ依頼する場合の弁護士費用。さらに追加で管財費用が発生する場合も。費用面の負担が心配な方への対応や方法もご紹介。
 本記事では、自己破産にかかる具体的な費用を詳しく解説します。

 

自己破産にかかる費用とは

 自己破産にかかる費用は大きく分けて3つあります。

1. 裁判所へ支払う費用
2. 弁護士を利用する場合は、弁護士費用
3. 破産管財人が選任された場合は、引継予納金(いわゆる管財費用)

 それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

 

1. 必須:裁判所へ支払う費用

 自己破産は、裁判所を通して進める手続です。そのため、自己破産の手続を行う場合、下記の費用が必ず発生します。
 
 A 印紙
 自己破産の申し立てをする際、印紙を申立書に貼付して裁判所へ提出します。
 埼玉県管内の裁判所の場合、金額は1,500円です。(2024.11時点)
 
 B 郵便切手代
 裁判所との連絡や通知のために必要な郵送費(郵便切手代)がかかります。
 埼玉県管内の裁判所の場合、金額は3,000円*です。(2024.11時点)*債権者が50以上の場合は6,000円
 
 C 官報広告費
 官報広告費とは、自己破産をした際に国が発行する官報という紙面にその内容が掲載されるための費用です。
 金額は11,859円(同時廃止事件)、または15,499円(管財事件)です。(2024.11時点)

 

2. 弁護士費用

 自己破産の手続を弁護士に依頼する場合、弁護士費用が発生します。
 弁護士費用は、事務所ごとに金額が大きく異なります(10万円単位で異なることも)。
 多くの法律事務所がHPに弁護士費用を掲載しているので、お住まいの地域を中心にいくつか確認してみるのをおすすめします。
 
 当事務所の場合、個人の自己破産にかかる弁護士費用の基本料金は330,000円(税込み)です。
 ただし、個人事業主の場合や事案の複雑さにより、金額が加算となることがあります。正確な弁護士費用は、法律相談で皆様の状況を把握した後に弁護士からお客様へ具体的に明示します。
 
 自己破産の費用については、弁護士に法律相談した後、正式に事件処理を依頼する前に総額を確認することが重要です。

 

3. 破産管財人の費用

 自己破産の手続には、比較的簡易な①同時廃止と複雑な②管財事件と呼ばれる2つの方法があります。
 ②管財事件の場合、破産管財人へ支払う費用が発生し、埼玉県管内の裁判所ではその金額は200,000円~です。実際の金額は事案ごとに裁判所が決定します。

 

総額でいくら必要なのか

 弁護士費用を330,000円とした場合の自己破産にかかる総費用は以下のとおりです。
 下記は個人の自己破産を想定しています。事案の複雑さ等により金額が異なることがありますのでその点はご承知おきください。

 

パターン1 同時廃止×弁護士に依頼

印紙1,500円
郵便切手代3,000円
官報広告費11,859円
弁護士費用330,000円
合計346,359円

 

パターン2 管財事件×弁護士に依頼

印紙1,500円
郵便切手代3,000円
官報広告費15,499円
弁護士費用330,000円
破産管財人予納金200,000円(*最低金額。事案ごとに決定。)
合計549,999円

 

パターン3 管財事件×自分で申立(弁護士なし)

 弁護士に依頼せずご自身で自己破産の申立をする場合、正確な調査の必要性等により、破産管財人が選任されることが多いようです。また、弁護士に依頼している場合の予納金は最低200,000円からですが、本人申立の場合は高額になることがあります。なお、東京地方裁判所における本人申立の場合、予納金額は最低500,000円とされています(2023.4.1時点)。

 

印紙1,500円
郵便切手代3,000円
官報広告費15,499円
破産管財人予納金500,000円*
合計519,999円

 
* 参考 東京地方裁判所民事第20部 破産事件の手続費用一覧
https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/2023/min20/remeral/03hasann_mousitatehiyou_R5.4.1.pdf
 

管財事件になるケースとは

 自己破産手続には、「同時廃止」と「管財事件」と呼ばれる2種類の手続方法があります。会社および個人事業主の場合は原則「管財事件」となり、その他の個人の場合は、裁判所で定められた基準により判断されます。
 ここでは管財事件になりやすいケースを一部紹介します。

  • 家を所有していて、住宅ローン残高より家の価値が高い
  • 借金のほとんどがギャンブルや投資の失敗でできたものだ
  • 破産手続の前に親族や友人への借金だけ返してしまった
  • 株取引で大損した
  • クレジットカードで購入した高価な時計や宝石を返済未了のまま売却した
  • 生命保険を長年掛けていて、解約返戻金が高額である

 ただし、上記に該当しても同時廃止と判断される場合があります。管財事件になるかならないかは、個人の具体的事情や裁判所の判断により異なりますので、詳しくはご自身の地域で実績豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

 

同時廃止と管財

 
参考 東京地方裁判所民事第20部 よくある質問
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section20/situmonn_tousannbu/index.html
 

弁護士に自己破産を依頼するメリット

メリット
 

 弁護士に依頼せずにご自身で自己破産の申立をする場合、弁護士費用はかかりません。しかし、破産管財人が選任された際は、弁護士に依頼するのと同じくらい費用がかかってしまいます。さらに裁判所での手続になるため申立書の作成、裁判所へ提出する資料の収集など膨大かつ専門的作業が必要になるため、自己破産を考えている方は、まず弁護士に相談するのが現実的でしょう。
 
 その他弁護士に自己破産を依頼するメリットは以下が挙げられます。

 

1. 借入れ先からの督促が止まる

 弁護士に依頼すると、原則として貸金業者などの債権者(借入先)からの取り立てが一時停止されるため、精神的負担が軽減されます。

 

2. 裁判所とのやり取りを直接行う必要がない

 自己破産には多くの書類作成や説明が必要で、裁判所や債権者(借入先)との対応も行います。弁護士が関与すると手続がスムーズに進む蓋然性が高まります。

 

3. 免責(≒借金が免除になる)まで徹底サポート

 免責許可の決定まで弁護士が法的にサポートします。

 

弁護士費用の支払いが難しい場合の対策

 これまでご紹介したとおり、自己破産にかかる費用は少額とはいえません。自己破産を検討している方は、借金の返済に悩んでいる状況ですので、弁護士費用を準備することは大きな負担といえるでしょう。
 ここでは、弁護士費用の支払いが難しい場合の対策について紹介します。

 

1. 分割払い

 弁護士費用を一括ではなく、分割で支払っていく方法です。当事務所では、分割払いを利用される方が圧倒的に多いです。
 弁護士に依頼すると借金の返済はストップするため、これまで返済に充てていた分を弁護士費用の分割払いに回せるようになります。
 当事務所では、お客様の収支状況を確認した上で、月々の支払額を決定します。分割払いの回数に上限を設けている弁護士事務所もあるため、事前の確認が必要です。
 
 基本的には、弁護士費用の支払いが全て完了した後に、裁判所へ自己破産の申立を行います。弁護士に依頼してから自己破産の終了までに期間がかかる点はデメリットといえるでしょう。しかし、この期間を通して生活の立て直しができるという一面もあります。

 

2. 援助

 例えば、親族に弁護士費用を支払ってもらうケースが考えられます。自己破産をする場合、新たな借入れ(借金)をすることはできないので、返済の義務がない「贈与(援助)」であることが重要です。

 

3. 法テラス

 前述の分割払い、援助のどちらも難しいという場合は、法テラスの利用が考えられます。
 法テラスとは、経済的に困窮している人のために、弁護士費用を法テラスが立て替え払いをしてくれる制度です。一定の収入基準を満たせば無利子での分割返済が可能です。
 弁護士は法テラスから弁護士費用を一括で受領するため、自己破産の申立がスムーズにできるのがメリットと言えます。ただし、あくまで立替え払いですので、自己破産手続が終了した後も、法テラスへの分割返済が残るのが一般的です。
 収入や資産基準があり全ての人が利用できる制度ではないこと、法テラスを利用できる弁護士事務所とできない弁護士事務所があるので、事前に確認が必要です。

 

自己破産の手続の流れと期間

ステップ/フロー
 

 自己破産の手続の流れについて簡単にご紹介します。

 

1. 弁護士へ依頼

 弁護士に依頼したら、弁護士が借入先に通知を行うため、原則として貸金業者などの督促が停止され、借金の返済もストップします。

 

2. 弁護士費用の支払いと申立準備

 弁護士費用の支払いが完了した後、裁判所へ自己破産の申立てを行います。

 

3. 自己破産手続の進行

 同時廃止(簡易な手続)の場合、申立から免責の決定及びその確定(手続終了)までは、通常約4ヶ月程度かかります。*事案や裁判の混雑状況により、期間が異なる場合がございます。

 

4. 弁護士に依頼してから自己破産手続が完了するまでの目安期間

 弁護士費用を10回の分割払いにした場合、弁護士に依頼してから手続きが全て終了するまでには、見込みとして約1年2ヶ月程度がかかります。
 管財事件が見込まれる場合は、破産管財人の費用20万円を準備できてからの申立となりますので、費用の分割払いを選択されている場合、さらに期間は長くなります。
 長期間にわたる手続となるので、連絡が取りやすい、相談しやすい弁護士事務所を選ぶことをおすすめします。
 自己破産の手続の流れの詳細を知りたい方は以下をご覧ください。

 

自己破産手続の流れ

 
自己破産手続きの流れ
 

無料法律相談のすすめ

 借金にお悩みの方は、弁護士へ相談することをおすすめします。
 借金に関する相談は無料で実施している法律事務所も多く、弁護士へ相談するのが初めての方も安心してご利用いただけます。
 借金の解決方法は、自己破産だけではありません。弁護士があなたに合った解決方法を提案してくれるでしょう。
 借金の返済が難しいとお考えの場合はまず弁護士に相談してみてください。

 

まとめ

 今回は自己破産にかかる費用について解説しました。
 自己破産は費用が高額であるため、躊躇してしまう方も多いでしょう。しかしご紹介したとおり弁護士費用の分割払いや法テラスのように、費用が不安な方も安心してご利用いただけるような対応が可能です。
 江原総合法律事務所では、埼玉県を中心に借金に関する相談を承っているため、特に埼玉(さいたま、越谷)の裁判所での取扱いには数多く実績があります。JR武蔵野線からアクセスが良好な千葉方面から来られる方も多いです。借金にお悩みの方はぜひ無料相談をご利用ください。
 どんな弁護士がいるのかと不安に思われる方には、弁護士紹介ページ、実際に当事務所をご利用されたお客様の声も掲載しておりますので、あわせてご覧ください。

 

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この記事の監修者

弁護士 黒澤 洋介

注力分野:管財事件、個人破産、個人再生(個人再生委員含む)

弁護士 黒澤洋介

茨城県出身。横浜国立大学法科大学院卒業。埼玉弁護士会所属。

コメント:
近年は、裁判所から選任される破産管財人としての職務も多く、多方面で経験を積んでいます。法人破産などの中・大規模案件は所内でチームを作り、複数名の体制で対応することも可能です。まずはご相談ください。