どの債務整理を利用すべきか
1 前提事実を整理する
債務整理の方法を考えるにあたり、まずは、以下のような前提事実を整理する必要があります。
① どの業者に対して、いくらの借金が残っているか
② 収入状況、今後の継続的な収入の見込み
③ 家族構成、支出の状況
④ どのような財産を保有しているか(住宅、自動車の有無)
⑤ 職業(資格制限がある職種かどうか、給与所得者か、個人事業主か)
⑥ 借金の原因
⑦ 保証人がいるか
⑧ 債務整理に対するお客様の意向(できれば破産したくない、なるべく返済額を減らしたい、など)
2 メリット・デメリットを理解する
次に、整理した前提事実をもとにして、任意整理、個人再生、自己破産のメリット・デメリットを理解することが重要です。
各手続きのメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
3 手続選択の基本的な考え方
⑴ 一番重要なのは借金額と収入
どの債務整理を選択するかにあたり、最も重要な考慮要素は、お客様の借金の金額とお客様の収入です。
例えば、お客様に継続的な収入がなく、月々一定額を返済していくことが難しい場合には、自己破産を選択せざるを得ないでしょう。お客様が自己破産を回避することを希望していたとしても、現実的に任意整理や個人再生の方法で継続的に返済していくことが難しい場合には、お客様のご意向に沿えないケースもあります。
逆に、お客様が自己破産を希望していたとしても、借金の金額が少額であり、相応の収入がある場合には自己破産が難しいケースもあります。
このように、お客様の借金額と収入によっては、選べる債務整理が最初から限定されてしまう場合があります。
⑵ 任意整理が可能かどうかを考える
複数の選択があり得る場合、任意整理が可能かどうかを考えます。
任意整理が可能かどうかは、お客様の借金の金額、借金をしている業者名、借り入れから債務整理までの期間、お客様の収入・支出の状況、家族構成、今後のライフプラン、お客様のご意向を考慮して、月々の収入から、借金を長期分割で返済していく余剰を生み出せるかを検討します。
大まかな考え方としては、まず、借金の総額を36回(3年)で分割して支払う場合に月々に必要となる返済額を計算します。
次に、お客様の収入からの月々の余剰(返済原資)を計算します。返済原資の一応の目安は、月々の手取り収入から住居費を除いた金額の3分の1の金額といわれています。ただし、月々の余剰は、お客様の生活状況により様々です。現在の収入と支出だけでなく、将来的な支出の見込みも考慮して、具体的に検討する必要があるでしょう。
月々の返済額と返済原資を比較した上で、返済原資が上回るようであれば、任意整理で解決できる可能性があります。
⑶ 自己破産か個人再生かを考える
任意整理が難しい場合には、自己破産か個人再生を検討する必要があります。
この場合、まずは自己破産を検討すべきでしょう。なぜなら、債務整理は、お客様の借金問題を解決して、経済的に再出発することを目的とするものですから、自己破産により借金が0円になることが最も効果的といえるからです。
自己破産を検討した上で、自己破産を回避したい理由がある場合には、個人再生を検討します。具体的には、住宅ローンがあり自宅を残したい場合、自己破産では資格制限がある職業についている場合、ギャンブルや浪費で多額の借金を作ってしまい免責不許可事由がある場合などが挙げられます。
4 各手続を選択すべき主なケース
以下では、各手続きを選択すべき主なケースについて、具体例を解説します。
⑴ 任意整理を選択すべき主なケース
・ 複数の債権者のうち、一部の債権者についてのみ、支払いが困難になっているような場合
・ 一定の収入があり返済はしているが、利息が高く元本が減らず長期間返済している場合
・ リボ払いを多用したため、いつ借金の返済が終わるのかわからなくなってしまっている場合
・ 特定の債権者のみ手続きから除外したい場合(例えば、親族が保証人になっている借金について、債務整理を行ってしまうと、保証人に迷惑がかかってしまう)
債権者と合意できない、ご自身の収入状況、返済能力を考慮して、借金を完済することが難しいようであれば、より強力な手続である個人再生手続や自己破産手続を検討することになります。
⑵ 自己破産を選択すべき主なケース
・ 怪我や病気などで働けない状況にある、生活保護受給中であるなど、借金の返済が困難であることが明らかな場合
・ 収入や資産に比して、継続的な支払いが困難であって、個人再生や任意整理の利用が困難である場合
⑶ 個人再生を選択すべき主なケース
・ 住宅ローン支払継続中のマイホームを残したい場合
・ 自己破産手続をとることに強い抵抗がある場合
・ 自己破産手続での資格制限を受ける職種である場合
・ 免責不許可事由があり、自己破産の選択が難しい場合
個人再生はメリットの多い手続であるが故に、将来にわたって安定した収入が見込まれる方でなければ、利用することができないなど一定の条件があります。また、そもそも、収入が少なく、3年から5年の期間で法律により減縮された借金を完済できる見込みがない場合には、個人再生手続の選択は難しく、多くの場合、自己破産を選択せざるを得ないでしょう。
どの債務整理を利用すべきかを検討するにあたって、まず、ご自身で、どの業者から、いくら借金があるのか、他方で、ご自身にどういった財産があるのか等基本的な事実関係を把握する必要があります。その上で、前述したそれぞれのメリット・デメリットを考慮して決定します。
この記事の監修者
弁護士 星野 彩子
注力分野:法人破産,個人破産,個人再生
神奈川県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。埼玉弁護士会所属。
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